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【御報告】2021年7月19日(月)に MOTシンポジウム: 世界経済展望シリーズ②「DXと福祉国家の関係」をオンラインで開催。株式会社三菱総合研究所の武田洋子様をお迎えしました

東京理科大学MOTは、様々なテーマについて、皆様と議論を重ねていく場をオンライン中心に展開しています。
2021年7月12日から3回のシリーズで、経済番組での解説などでおなじみのフェルドマン教授によるMOTシンポジウム: 世界経済展望シリーズを3回にわたって開催しております。

第2回目の7月19日(月)は、「DXと福祉国家の関係」と題して、DXが日本経済にとって天使か悪魔か、日本社会はどのような準備をすべきかというテーマでした。コンピューター化による雇用の破壊と創造、労働移動、学び直しの観点から、まずフェルドマン教授が話をし、それに対して武田洋子様((株)三菱総合研究所 シンクタンク部門 副部門長、行政・経済セクター長・チーフエコノミスト)からコメントをいただきました。

フェルドマン教授のポイント:
DXは天使か悪魔か:
(1)今後は労働力が全人口より減るので、生産性を加速させないと生活水準は維持できません。DXは生産性を大きく加速する技術だから、日本にとって天使であると言えます。
(2)一方、マッキンゼー・グローバル研究所の計算によれば、DXの進展によって、2030年までの日本では1600万人の雇用が破壊されるのに対し、新しい雇用は1000-1100万人しか生まれません。大量失業時代をもたらすDXは、日本にとって悪魔でもあります。

どの職種が危ないか:
(1)「手の仕事」、「頭の仕事」の区別は余り役に立ちません。コンピューター化できる税理士のような「頭の仕事」も随分破壊されるからです。
(2)一方、「ルーティン・ワーク」(=繰り返す仕事)と「一回限りの仕事」の区別は役に立ちます。手を使う仕事でも頭を使う仕事でも、コンピューター化できないのは、一回限りの仕事だからです。
(3)最大のスーパーコンピューターでも、人間社会の社交性は真似できませんので、社交性が必要な職種は比較的安全です。

学び直しの促進
(1)職を失う人がスムーズに新しい仕事に移動できるようにするには、欠かせないのは学び直しです。
(2)日本の雇用習慣(年功序列など)及び福祉国家は学び直しの魅力を低くし、労働移動を阻んでいます。その結果、イノベーションをも阻んでいます。
(3)ベーシック・インカムなど、新しい構想を福祉国家に取り入れて、初めて生産性を加速する機能を持つ社会システムになります。

武田様のポイント:
雇用破壊と創造:
三菱総研の調査・研究では、破壊される雇用、新規雇用の計算はマッキンゼー社の計算と似ています。一方、日本の労働力が減るなか、問題は雇用の純減よりもミスマッチです。 

福祉国家:日本の政府も企業も、ミスマッチ問題及び福祉国家の再編を取り組む準備は不十分です。 

今後の課題
日本が早期に取り組むべき課題は、(1)DXによる社会課題の解決、(2)学び直し、(3)高齢者も働ける、雇用の流動性を高める労働改革、(4)社会保障制度改革と財政健全化、(5)グリーン産業での競争力向上、です。

武田様とフェルドマン教授のお二人のお話の後、ご参加の皆様と活発な質疑、議論となりました。

東京理科大学MOTでは「生きた学び」を重視し、様々なプログラムを展開しています。今後も様々なテーマについて、皆様と議論を重ねていく場をオンライン中心に設けて参ります。どうぞご期待ください。

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