2025.07.22 修了生が紹介するMOTの講義

専門科目「企業家論(アントレプレナーシップ)」(藏知弘史教授)|第3回:企業家精神 2 ~ 組織経営の基礎となる理念 ~

【2025年夏学期】

講師は、キーエンスなどに勤務後、複数の起業をされたシリアルアントレプレナーである藏知弘史教授である。シリアルアントレプレナーの先生らしく、単なる座学ではなく、ご自身の経験や、社会人学生が職場で日々感じている事をトピックとして、先生が議論をファシリテートしながら、学生と意見を交換して考えを深めていく方式の講義である。

事前課題は、経営理念が危機的状況下で社員の自発的行動をもたらしたケーススタディである。しかし、授業は、従業員の立場からすると、経営理念に共感しているというよりは、経営者に押し付けられているだけで、従業員が経営理念に基づきながら活動しているケースは非常に少ないという実感から話は進められた。加えて、受講生の職場の話をベースに、経営陣であっても、経営理念に基づいて意思決定をしていない企業が多いという現実からの議論が展開された。また、いくつかの企業の経営理念を例として挙げた上で、各社の従業員は、どの経営理念なら覚えていると思うかといった問いや、経営トップの掲げる経営理念を浸透できないのは誰の責任かといった議論に発展していった。さらに、松下幸之助が経営理念を掲げたのは、松下電器産業を起業してから、何年後かというように、起業当初に経営理念が必要なのかどうかといった点にも議論は及んだ。

議論を重ねる事によって経営理念とは何か、その必要性と価値は何かを改めて深く考える事ができた。

経営理念は、組織に浸透させることができれば大きな力になるが、ほとんどの企業ではお飾りに過ぎず、多くの従業員は覚えてもいないのが現実だと思う。その中で、パーパス経営などの基本を学んだ上で、他社や受講生の企業の事例を基に、自分がどのように経営理念を職場に浸透させていけるのか、また経営理念に関する思考をどの様に深めていくべきかを考えさせられる授業であった。

執筆者:2021年度修了生(金融業勤務)