2025.06.27 修了生が紹介するMOTの講義

専門科目「スタートアップサイエンス」(青木英彦教授)│第5回:スタートアップ成功の「事業計画書」と「資金調達」

【2025年度春学期】

理系出身の学生が多く学ぶ理科大MOTでは、学生それぞれがイノベーションの可能性を秘めた技術や知識、アイデアを携えて互いに切磋琢磨しています。社会を変えうる起業アイデアの重要性はもちろんですが、イノベーションを実現するにはその可能性や魅力を周囲に訴え、資金や組織などのリソースを獲得するスキルも欠かせません。「スタートアップサイエンス」はイノベーションの実現手段として起業に焦点を当て、スタートアップのプロセスや事業の「目利き力」を養う科目です。今回の授業では、「事業計画書」「資金調達」をテーマに在学生の皆様と学ぶ機会をいただきました。

授業は前半と後半に分けられ、前半は担当教員から事業計画書と資金調達について講義がなされました。優れたアイデアを世に問うためには、MOTに在籍する多くの学生が研究の現場で培った技術者の視点だけでなく、顧客起点の事業計画書で資金の出し手を説得することが必要となります。講義では事業計画書に必要な要素について、証券アナリストとして数多の企業を分析してきた青木先生、ご自身も起業を手掛ける藏知先生により、実例を交えた生きた知識が展開されました。もうひとつのテーマである資金調達についても、単なるファイナンスではなく「スタートアップにとってのキャッシュフロー」という重要テーマに焦点を当てた解説が本科目ならではの特徴でした。学生との質疑を通じても、ユニクロやAmazonなど、有名企業の豊富な成功・失敗事例を通じて理解が深められました。

授業後半は、3~4人に分かれてのグループワークでした。スタートアップサイエンスでは、最終発表でグループごとに起業アイデアをプレゼンすることを目的としており、前半の講義で得た知識も踏まえながら真剣な議論が交わされていました。グループワークではホワイトボードへの手書きやパワーポイントを投影しての編集、リモート会議を活用しての画面共有など、それぞれ工夫しながら事業計画や提案内容を深めていきます。起業アイデアは当初学生それぞれが持ち寄ったものからグループで話し合う中で選ばれ議論を重ねており、すでに投資資金の回収期間など緻密な計画を書き出しているグループもありました。ここでも青木先生と藏知先生が各グループを回り、それぞれの事業の参考になる事例や理論が紹介されました。

先生と学生のやり取りでは授業における起業のシミュレーションにとどまらない詳細な検討がなされ、先生方の知見と多様な学生の経験が組み合わさることで、MOTが進化を続けていることが感じられました。今回の授業のテーマである事業計画書や資金調達をはじめ、「スタートアップの成功確率を高める」という本科目の目的は、学生それぞれが持つ技術的な専門知識に顧客視点の提案力が合わさり、所属組織の内外で強力な武器になることと思います。講義とグループワークによる双方向の議論を通じ、最終発表ではより洗練された起業アイデアが報告されることを楽しみにしています。

執筆:2022年度修了生(損害保険業勤務)