中山 裕香子 教授 Yukako Nakayama
慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業。慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程修了。コロンビア大学Executive Development Program修了。野村総合研究所において、放送・通信産業や電機産業における事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業立ち上げ支援などのプロジェクトに従事。2004年から2008年まで野村総合研究所アメリカに勤務し、米国の通信・メディア産業に関する調査研究を実施。日本に帰任後は、デジタル化で大きな変革期を迎えたメディア産業や小売・流通産業へのコンサルティングプロジェクトを担当。2019年4月より本専攻非常勤講師、2021年4月より現職。
教員の志史
始めて自分の価値が大きく揺さぶられたのは、高校生の時に交換留学生として過ごしたアメリカ、オハイオ州・クリーブランドでの1年間でした。デトロイトにも近いその都市は、日本車の躍進により打撃を被ったことから、ジャパンバッシングの最中にありました。はじめて外側から眺める日本。もちろん、現地労働者の感情も理解できます。どちらかが一概に悪いということではなく、世界には多様な立場や見方があるということ。そうした実相が、強烈な体験として迫ってきました。
慶應義塾大学大学院(理工学研究科電気工学専攻・修士課程)を修了して入社した野村総合研究所では、主に放送・通信分野での様々な事業戦略立案に携わりました。東西冷戦時代、放送はプロパガンダのツールとして使われており、多くの国では国内に閉じたメディアでしたが、冷戦終結とともに一気に国際化し、世はまさに多チャンネル衛星放送が本格始動しようという時期でした。それまで鎖国状態だった放送業界が世界に向けて扉を開き、多様な事業者が日本に参入してきた時代でした。私自身、アメリカの大手衛星放送プラットフォームの日本進出を支援することになったのですが、この仕事には、文字通り寝食を忘れるほどに没頭しました。彼らに対し、日本が目指した放送のあるべき姿・放送の本質を考え、その文脈を噛み砕いて伝えることに夢中になりました。残念ながら彼らの日本での事業は短命で終わりましたが、私にとってはビジネスのダイナミズムを肌で感じる貴重な経験となりました。さらにその後は、インターネットが台頭し、メディア産業の構図が大きく変わったのは皆さんもご存じの通りです。
こういった経験や知見を次世代に伝えるために、東京理科大学MOTの教壇に立っているわけですが、今はVUCAの時代と言われ、なかなか先が見通せない時代です。あらゆるモノが手に入る時代、マーケットに尋ねてもビジネスの解はなく、ユーザー自身にも想像できない潜在ニーズを探る必要があります。そのような中では、自身や自社のありたい姿やビジョンを追求することに突破口があるのではないでしょうか。理科大MOTで教えることにより、学生の皆さんの背中を押し、皆さんのありたい姿やビジョンを探るお手伝いをしたいと考えています。