青木 英彦 教授 Hidehiko Aoki
グローバルな視点から
経営改革の指針を示す!
1989年神戸大学経営学部卒業。1994年Duke大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。2018年神戸大学大学院経営学研究科経営学専攻博士課程修了、博士(経営学)。
2020年8月まで、のべ31年間にわたり小売業界担当の証券アナリスト業務に従事。ファーストリテイリング、セブン&アイ、ニトリホールディングス、良品計画、イオン、楽天、ZOZO、ローソン、ファミリーマートなど多数の大手小売企業を担当。1989年より野村総合研究所、1996年より野村證券インターナショナル(米国ニューヨーク)、2000年よりゴールドマン・サックス証券東京支店、2005年よりメリルリンチ日本証券、2017年より野村證券にてセルサイド・アナリスト。ニューヨークでは、Amazon.com、Wal-Mart stores、Gap、Coca Colaなどを担当。グローバルな視点と幅広い周辺調査に基づいたサプライチェーン全体の構造分析やデジタル戦略評価に強みを持つ。
産業構造審議会流通部会臨時委員、製・配・販連携協議会準備委員などを歴任。各種アナリストランキングで上位入賞多数。2018第一回ベーシック・レポート・アワードで優秀賞を受賞。トムソン・ロイター アナリストアワード2018「銘柄選定小売セクター」第一位、「銘柄選定総合」第一位。小売、食品、消費財、IT、物流業界など産業界に幅広い人的ネットワークを持ち、現場・現実とセオリーを合体させた講義を心掛けている。ゲスト対談では、30年余にわたる取材経験を活かし、本質を引き出す対話で受講者の学びを深める。
教員の志史
「高校時代の仏教教育に大いに感化」
私は、兵庫県宝塚市で、サラリーマンの父、専業主婦の母の長男として生まれました。父によると、幼いころの私はとりあえず走るという子供だったらしく、慎重に慎重を期す弟とはかなり違う性格だったようです。その分、ずっと生傷の絶えない毎日を過ごしていました。
高校は大阪の清風高校という戒律の厳しい仏教系の男子校出身です。毎朝、全校生徒3000人が校庭に整列し、般若心経を唱え、学園長の訓話を聞くという日々を過ごしました。
「徳・健・財、三拍子そろった姿でルールを守り、世の中に尽くす人間になれ」
「自利利他、すなわち、自分のためになることがそのまま人のためになり、人のためになることが世の中のためになる、社会のモデルになるという道を勇往邁進せよ」
と毎日叩き込まれたのですが、多感な時期に叩き込まれたその教えは、その後の私の考え方に多大な影響を及ぼし今日に至っております。厳しい校則に縛り付けられ、在学時は恨めしい気持ちもありましたが、今となっては本当に大切な哲学を体得できたと、感謝の気持ちでいっぱいです。
「Debateに明け暮れた大学時代」
神戸大学経営学部に入学してからは、ESSのDebate Sectionに所属し、英語での論戦に明け暮れました。Debateは、一つの命題について賛成派と反対派に分かれて戦うゲームです。賛成派と反対派の立場は、試合開始直前にじゃんけんで決められますので、Debaterたちは、賛成派と反対派の双方の立場を準備しておかなければなりません。ここに、感情や個人的な信条が入り込むすきはなく、あくまで論理の強さを競うわけです。この経験から、全く正反対の意見にも、それぞれ尊重するべきロジックがあり、意見そのもの(claim)よりも、その証拠事実(data)とそれを意見に結びつける論拠(warrant)に注目するべきであると学びました。
のちに進学したDuke大学MBA時代に、級友らが、”Disagree agreeably” とか、”Open disagreement”などと表現しているのを聞くにおよび、意見と人格をしっかり区別し、違う意見を持つ人を人間として尊重するということは、経営において正しい意思決定を下したり、前向きな組織文化を形成したりするうえで非常に重要なマインドセットだと、確信した次第です。
「証券アナリストの31年間」
1989年から2020年まで、小売業担当の証券アナリスト業務に従事しました。所属しましたのは、野村総合研究所(1989-1996)、米国野村證券インターナショナル(1996-2000)、ゴールドマン・サックス証券(2000-2005)、メリルリンチ日本証券(2005-2017)、野村證券(2017-2020)と多岐にわたりましたが、調査対象は一貫して国内外のEC・小売業界でした。小売業界は消費者の厳しい目に直接さらされているだけに、業績の浮き沈みが非常に激しい業界です。戦略の巧拙、実践を担う組織、人材、業務プロセス、組織文化など、目に見えない経営力が競争力を大きく左右する、アナリストとしては非常に難易度の高いセクターです。そのダイナミズムが生んだ数々のドラマには、すべての産業・経営者にとっての貴重な教訓がちりばめられています。
米国勤務中に担当しましたアマゾン、ウォルマート、コカコーラ、P&G、そして日本で担当したファーストリテイリング、セブン&アイ、イオン、丸井グループ、Jフロントリテイリングなどの、有能で魅力的な経営者たちと間近で接し、ディスカッションを交わすことができたことが、私のかけがえのない財産です。本当に感謝しています。
「一緒に走りましょう!」
これからの産業・経営を担う企業戦士の皆さん。ぜひ一緒に、これからの経営はどうあるべきか、技術を経営にどう生かすべきか、を探求しましょう。皆さんといっしょに思いっきり走らせていただくことを楽しみにしています!