カリキュラムについて

【2023年4月から、MOT3.0を始動】

東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻(MOT)は、社会(産業界等)の要請に合致する高度職業人材育成をさらに充実させるため教育課程を開発し、2023年4月からMOT3.0と呼ぶカリキュラムをスタートさせました。

教育課程の再構築のポイント
・科目部分を再構築。教育領域を細分化し授業科目を配置しています。
・演習科目以外の授業科目では、学生の多様性に合わせて必修科目を廃止し、授業科目を自由に選択できるようになりました。

科目区分/修了要件と履修要件

【科目区分について】

基盤科目
専門科目、社会連携科目および演習科目を履修し、グラディエーションペーパーに取り組む上で必要かつ共通の応用的知識や知見を習得する科目を配置する。

専門科目
学生のニーズに応える能力、グラディエーションペーパーを完成する上で、必要な専門的知見を習得する科目を配置する。

社会連携科目
イノベーションを起こすCXOや起業家を目指す学生が、必要とする知見を学ぶだけでなく、MOTのほか、本学他学部、企業や業界団体等と交流、連携していく科目を配置する。

演習科目
CXOや起業家を目指す学生が、イノベーションを起こしてきた経営者や起業家等のケーススタディに触れる等の機会を通じて、学んだ知見を総合的に組み立て、特別解として実践知を習得する科目を配置する。

【修了要件と履修要件について】

修了要件
2年以上在学し、以下の科目修得条件を満たし、40単位以上を修得すること。
①必修科目を全て履修し、修得すること。
②専門科目から20単位以上を履修し、修得すること。

履修要件
①ゼミナール1~4は、科目名の1~4の順番どおりに履修し、修得することを条件とします。
②授業科目により指定科目を履修し、修得していることを条件とする場合があります。
③1年間に履修科目として登録ができる単位数の上限は、34単位となります。また、半期に履修することができる単位数の上限は、28単位となります。

カリキュラム「基盤科目」の紹介

基本的なカリキュラムの「科目区分」と「授業科目」の紹介になります。

▼技術経営入門

担当教授:青木 英彦

技術経営入門は、技術経営の初歩的知識をつける科目ではありません。東京理科大学技術経営専攻の門を開く入門科目です。専攻が提供する専門科目、社会連携科目および演習科目を履修する上で必要な基盤として、教育の全容を含む技術経営全般に関する知識・実務等について学びます。専門職大学院の意義、MOTとMBAの違いや本カリキュラムの特長、グラデュエーションペーパーの位置づけを理解するとともに、容易には解が得られない課題に挑戦してもらい、グループワーク・グループ発表の練習をします。この科目を通じて、今後2年間、共に学ぶ同級生たちへの理解を深め、お互いの違いを認めた上でリスペクトを得、共同作業の困難と喜びを実感し、実りある学びへと助走することができます。学生の皆さんは、同級生や教員からの刺激を受け、きっと新鮮な気づきと驚きを得ることができるでしょう。

▼企業産業分析予測

担当教授:若林 秀樹

全授業科目とグラデュエーションペーパー作成の基盤となります。通常のMBA等での企業分析とは全く異なります。情報収集や統計データの扱いから始め、IRやアナリスト業務実態、インテリジェンス概論、コンサルティングのフレームワーク分析概要、事業ドメインや経営重心分析、技術マップの分析や科学技術予想、最後に二社比較分析予想提言の発表会を行います。財務分析はもちろん、経営組織体制や業界構造分析を行いますが、伝統的な5Force分析だけでなく、3D事業ドメインマップ、経営重心分析など、オリジナルな手法も紹介します。機器分解や工場見学の解析も行います。分析だけでなく、技術や市場や業界構造、経営体制をも予測、設計することを通し、その検証から分析力を高め、業界構造・エコシステム構築の設計の演習も行います。毎回、宿題を課し、次回に参考になるレポートを紹介しますが、徐々に課題のレベルを上げていきます。

▼経営倫理とリスク管理

本科目は基盤科目として位置付けられ、専門科目・社会連携科目および演習科目を履修する上で必要な基盤として、経営倫理とリスク管理に関する知識・実務等について学びます。大きなイノベーションほど、そのリスクも高く、社会に及ぼす影響も大きくなります。イノベーションを担うCXO・起業家には、イノベーションに伴うさまざまな影響を理解し、責任を負う覚悟と、そのリスク、失敗の可能性にも十分な配慮をした上で、ビジョンを持つことが求められます。
本科目では、科学技術と経営は実践的に融合しているとの認識のもと、社会・産業界の急速な変化に敏速かつ革新的に対応し、社会を牽引することができるリーダーに求められる高い職業倫理観と志について深く考えます。

▼経営戦略とマーケティング

担当教授:中山 裕香子

経営戦略論とマーケティングは通常のカリキュラム編成では別科目として扱われることが多いようです。しかしながら、実践では経営戦略(全社戦略・事業戦略)と機能戦略としてのマーケティングは不可分の関係にあります。ここを意識したカリキュラムが学生の理解を促進すると考えます。技術進歩は、企業が提供する商品・サービスそのものの価値向上、販売価格、顧客・潜在顧客とのコミュニケーション(顧客体験価値を含む)などにインパクトを与え、ビジネスモデル変革へと発展することもあります。すなわち、さまざまなイノベーションの成果が経営戦略論とマーケティングに影響を与えているのです。本科目は基盤科目ですが、経営戦略論とマーケティングの基礎理論を押さえた講義を行い、ケーススタディによるグループ討議、全体ディスカッションを通して理解を深めていきたいと考えています。専門科目への導入科目としてお勧めしたい基盤科目です。

カリキュラム「専門科目」の紹介

▼研究開発マネジメント

担当教授:井上 悟志

本科目では、研究開発マネジメントに関する専門的知識・実務等について学ぶとともに、課題解決に向けた実践力を身に付けます。そもそも「研究開発」とは何でしょうか。自分では当たり前だと考えていたこの言葉が、業種により企業により必ずしも同じことを指してはいないことに気づき、まず驚きを感じることでしょう。
リスクを取りイノベーションを起こす、研究開発をいかにマネジメントするか、研究と開発の違いおよび研究開発以外の組織との違いを踏まえ、イノベーションの種類に応じ、モデル、組織制度、SGなど管理法、会計処理などについて、具体的事例を交えて紹介します。研究所のトップ等のゲストスピーカーも招聘する予定です。また演習ではこれまで、自社等の研究開発組織体制への改善提案や、公的研究機関の仮想公募への応募を行うなどの実践的課題を課し、知識の定着と運用能力を高めています。

▼イノベーションを生むデザイン・デジタル戦略

担当教授:中山 裕香子

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉がもてはやされ、遅れていたIT化の促進までもがDXと呼ばれていた時期もありましたが、それも少し落ち着き、デジタル変革の本質的な議論が進んでいます。DXは、デジタル技術を活用して自社のビジネスプロセス改革を行うDX1.0のステージから、デジタルが生み出す価値をもとに新しいビジネスを創造しイノベーションを起こすDX2.0へと進み、さらには社会的課題の解決を目指すDX3.0の議論も始まっています。デジタル化の本質は、デジタル技術を駆使して、データを知に変え価値に転換することです。その際には、隠れたニーズの発見や、顧客体験価値向上をデザインすることも重要な要素となります。今後はAIなどの活用により、非構造データなどの活用も期待されています。本科目では、ますます広がるデジタルによる変革の可能性を考え、企業や産業、社会への影響を議論します。

▼地域産業資源と伝統技術

担当教授:生越 由美

近年、人間の価値観は大きく変化し、大量生産の商品やサービスではなく、手作りなどの高付加価値な商品やサービスを好むようになっています。この価値観の変化を捉えてグローバルビジネスを拡大しているのがEUです。EUは高付加価値な農産物と加工品を「地名ブランド」で保護し、グローバルに稼いでいます。例えば、イタリアのパルマハムの売上は2兆円、スペインのハモン・セラーノは3兆円の売上です。地名ブランドを他の地域に模倣されないように、地理的表示保護制度などで保護しています。2024年からは、伝統技術も保護されます。日本が外貨を稼ぐためには、最先端技術とともに、農作物・加工品・伝統技術のブランディング&マーケティング戦略の構築が喫緊の課題と思われます。学生はEUと日本の理論と事例をもとにした講義およびグループディスカッションに参加することで、地域の産業の創出とともに、特有のブランディング&マーケティング戦略を学びます。

▼社会的安全保障

本科目は専門科目として位置付けられ、社会的安全保障に関する基本的視座・専門的知識・実務等について学ぶとともに、リーダー・起業家・CXOたる人材が社会・産業界の急速な変化を認識する際に不可欠なグローバルな視点を、深く考え、実践力を身に付けることを目指します。この科目では、国際関係・情勢の変化等を踏まえ、国際的視野における課題設定とその解決の背景にある国家安全保障に関する視座・知見と関連する議論について俯瞰します。その上で、半導体を巡る議論を例に、サプライチェーン等の経済安全保障的側面を議論します。さらに、それらの視座を実務実装する際の視点などについても議論し、社会(産業界等)の急速な変化に敏速かつ革新的に対応し、高い倫理観を持つ高度専門職業人として、科学技術と経営の実践的融合を、社会的安全保障的側面から考えます。

▼技術経営知財戦略

担当教授:生越 由美

CXOにとって重要なことは、技術経営における知財戦略に対する理解を深め、担当部署や弁護士・弁理士とコミュニケーションが取れることだと考えられます。CXOには知財の詳細な知識は必要ありません。ピンチを避け、チャンスを掴むセンスの修得が最も重要です。知財戦略は、プロジェクトの立ち上げ時から、研究開発、製品化、他の組織との連携など、全ての側面で配慮する必要があります。製品販売時に初めて検討するのでは、企業戦略は成り立ちません。本科目では、技術経営における知財戦略に関連するテーマを、特許法、
意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法の活用事例、契約の考え方や訴訟事例を通して学びます。学生は知的財産に関する知識、実務と事例をもとにした講義および演習形式の授業に参加することで、イノベーションの全ての段階で知財戦略が必要であることを実践的に学びます。本科目で知的財産制度の全容を学ぶことができます。

▼イノベーションを生む競争政策

担当教授:諏訪園 貞明

これまで洋の東西を問わず、競争政策上の事件の大半は、問題とされた企業などが市場の流れを読み誤った、最新の技術動向を見誤ったことで、価格設定・事業統合戦略などの失敗に陥ってしまったことが、その真因であったとみられます。その意味で、我が国に限らず、米・EU等のケースは、失敗事例の宝庫であるといえます。こうした事例を明日の成功の母と変えるのには、どうしたらよいでしょうか。初歩的な経済学・法学などの基本原則の紹介から始めて、GAFAMなどのプラットフォーム企業が問題とされた事例や最近の政策動向紹介、当局の幹部などの講義も交えつつ、また、さまざまな業界で働く学生同士のグループ討論を通じて、CXOに必要な知見を蓄え、競争政策の動向も踏まえた、新たなイノベーション戦略を生み出すための方策を探ります。

▼イノベーションエコシステム

担当教授:若林 秀樹

イノベーションを起こすためには、サプライチェーンやバリューチェーンの中での連携や、より多くの企業や研究機関、ベンチャーとの協創やオープンイノベーションが必要です。経営戦略も、競争から共創戦略、プラットフォーム戦略が注目され、こうしたエコシステムを形成できるかが、差別化要因となります。
R&Dフェーズでは、オープンイノベーションや、IMECなどの共同プロジェクトやコンソーシアム、事業フェーズでは、標準化団体が鍵となります。電電ファミリー、建設業の下請け構造、ケイレツ、アップルのエコシステムなども取り上げます。グラデュエーションペーパーでよく取り上げられるテーマであり、前提として、知っておくべき理論や事例について議論します。上席特任教授でR&Dエコシステムに詳しいゲストスピーカーを招聘します。

▼イノベーション志向ESG SDGs戦略

担当教授:加藤 晃

ESG投資やSDGsに関する専門的知識を学ぶことで、課題解決に向けた実践力を身に付けることを目的とした専門科目です。企業が直面するESG課題を解決するには、多くの場合、技術的イノベーションが必要であり、長期的な経営戦略に基づき着実に取り組む必要があります。それには投資家の理解が不可欠です。また、教育研修、研究開発、社会実装……何をするにもコストが掛かります。CXOには資金を提供する金融資本市場の考え方(サステナブルファイナンス)を十分に理解し、味方に付けるケイパビリティが求められます。カーボンニュートラル目標とカーボンプライシング(炭素税・国境炭素税・排出権取引などの競争政策や税制)、人権、統合報告、人的資本やガバナンス体制との関係についても触れます。この分野は、変化が激しいといえます。押さえるべき理論とカレントトピックスのバランスを考慮して講義を行います。なお、多彩なゲスト講師による講義も予定しています。

▼技術経営におけるガバナンス・法務戦略

担当教授:諏訪園 貞明

技術経営、あるいはMOTならではの、ガバナンス・法務戦略とは何でしょうか。新たなイノベーション戦略に対する当局の後追い規制、それらをさらに追いかける、言わば後手後手の「守りの戦略」がMOTで深掘りすべき対象でしょうか。企業は、本来、新たな技術の揺籃として、その方向性を見極めることができると同時に、「既存の法令等のルールを再解釈して、ルール自体を新たに構築・変更する機能」、いわゆる「クリエーション機能」を発揮できる唯一の主体です。
また、こうした機能を発揮する上で、さまざまなステークホルダーとの利害関係を整理し、組織全体の有機的ガバナンス戦略が不可欠となっています。そのため、主要なステークホルダーとのビジネス交渉戦略が事業の盛衰を決するといっても過言ではありません。本科目では、CXOとして欠かせないこれらの知見を、座学に加え、グループ討論・模擬交渉などを通じて、基礎から肌感覚で身に付けることを目指します。

▼価値創造

担当教授:中川 晃

人的資本経営の浸透、無形資産の重要性増大などに後押しされ、価値創造プロセスへの注目度が高まっています。果たして、企業価値はどのように創造されるのでしょうか。本科目では、企業価値を、顧客に提供する有形・無形の価値と、その結果創造される財務的な企業価値(時価総額+有利子負債)の二つの側面から考察することにより、企業価値創出のプロセスを多面的に理解することを目指します。人的資本や無形資産(見えざる資産)に係る理論に加え、自ら価値創造に挑戦してきた起業家や資本市場に属する価値創造の目利きプロたちとのディスカッションを通じ、自ら価値を創造しうる人材についての理解を深めます。企業価値を創造するのは、ほかでもない一人一人の社員であり、社員が構成する組織そのものです。本科目では締めくくりとして、企業価値を創造する組織文化についても議論します。

▼技術経営マーケティング

担当教授:日戸 浩之

技術経営においてマーケティングが果たす役割を多面的に学ぶことで、戦略の立案・遂行とイノベーション・起業の実行に資することを目的とします。具体的なテーマの一つ目は、企業が顧客満足や顧客経験価値をどう高め、顧客との関係性を構築するかという観点です。二つ目には、どのような事業においても原則、販売という機能は必要でそのために効率的・安定的に商品・サービス提供を担うチャネル構築が求められる点を学びます。三つ目の観点として、最近ではデジタル化の進行とともにEC(電子商取引)やソーシャルメディアの活用が進むなど、チャネルやプロモーションの在り方が大きく変化している点を捉え、企業が取り組むべき課題を検討します。これらのテーマについて、理論と事例に基づく授業に参加することで、技術経営とマーケティングとの関連性への理解を深め、企業経営、事業あるいは個々の学生自身が取り組む研究テーマに応用ができるようにします。

▼技術経営ブランド・ブランディング戦略

担当教授:日戸 浩之

現代の企業経営においては、かつてのようにブランドは富裕層向けのプレミアムな製品につけられることにとどまらず、競争優位性の高い企業がさまざまな領域で優れたブランドを構築して事業を推進する状況となっています。ブランドは技術経営においても、企業がイノベーションの成果を訴求し差別化を図るための重要な無形資産として価値の源泉となります。このようなブランドの重要性やブランディング戦略の要諦を学ぶことで、ブランド・ブランディング戦略を技術経営に関連付ける形で、企業経営、事業戦略や自身が取り組む研究テーマに応用することを目指します。本科目では、製品ブランド戦略、企業理念やESGと関連付けた形で展開されるコーポレートブランド戦略、B2Bブランディング、技術・部材のブランディング、ブランド・コミュニケーション、知財との関連など、さまざまな観点からブランド・ブランディング戦略を取り上げ、その本質に対する理解を深めます。

▼フィンテック戦略

担当教授:田村 浩道

昨今、ブロックチェーン、仮想通貨、Web3.0、AI活用など、金融分野のイノベーションの進展は目を見張るものがあります。自身の所属する業界が製造業で金融ではない、あるいは目指す役職がCFO以外のCXOである、という場合であっても金融分野における最新技術(+常識)を学ぶことはMOTの学生にとって極めて重要であるといえるでしょう。本科目「フィンテック戦略」は、フィンテックについて最新の知識を得るだけでなく、これを企業戦略にどう応用するか、その社会への影響を考えることを目的としています。前半では、日銀や金融庁からフィンテックの最前線で活躍する担当者をゲストスピーカーとして招聘し、金融の基礎とフィンテック動向を学びます。また後半では、金融工学・クオンツを学び、機関投資家が行う投資戦略の構築に関連する演習を行います。ここでは、他大学に先駆けて導入したブルームバーグ端末を用いて投資戦略シミュレーションを行います。

▼実践M&A戦略

担当教授:小林 憲司

事業ポートフォリオの選択と集中が企業経営において重要なテーマとなる中で、M&Aはビジネスを遂行する上で必須の技術と考えられるようになってきました。しかし、M&Aで成果を出すには、ターゲット企業の選定と価値評価、M&A検討時のビジネス、会計、税務、法務等のデューデリジェンス、M&A契約の交渉が不可欠であり、M&A後においてもインテグレーションをどう進めるかなどさまざまな課題を乗り越えなくてはなりません。本科目では、M&Aを戦略的に活用するための専門的知識・実務等について学ぶとともに、M&Aの実務担当者として価値あるM&Aを推進できるように、M&Aの着手からポストM&Aのインテグレーションまでを総合的に学習します。M&A交渉の中心である売買価格に関しては、企業価値評価の代表的手法であるDCF法と類似企業比較法について、例題を用いて実際に計算ができるように指導します。

▼イノベーションを生む財務戦略

担当教授:田村 浩道

本科目は、「財務会計」の基礎知識をベースとして、イノベーションの観点から財務を「戦略的に」活用するための専門的知識を学ぶ科目です。近年、GAFAやNVIDIAなど半導体ファブレス企業は、株式交換など多様な資金調達を通じ、M&Aによる成長を遂げてきました。一方、日本企業ではこれらの成功例は多くありません。この背景には、優遇税制や補助金などの政策の差だけでなく、「財務戦略」の違いもあると考えられます。本科目では、まず最適資本構成、日米の会計制度の違い、IFRSとNon-GAAPの違いなどを学び、会計制度の保守性・積極性とイノベーションや競争力の関係について学習します。また、実際に財務戦略を実践してきた企業のCFO、スタートアップ企業に財務戦略をアドバイスしている公認会計士などをゲストスピーカーとして招聘し、ディスカッションを通じて、実務において生じうる課題を解決することができる実践力を身に付けます。

▼経営理論概要

担当教授:岸本 太一

マネージャーの仕事を10個挙げてみてください。この質問に対してスラスラと答えられる実務家は、実はすでに管理職に携わっている方を含めても、日本ではあまり多くありません。マネジメントで失敗する主要な原因の一つは、視野狭窄にあります。本来ならば組織構造の改変が喫緊の課題にもかかわらず、営業出身の事業部長であるせいかマーケティング関連の施策ばかりに注力してしまい、課題が一向に解消されない、というのがその典型例です。経営学の理論は、マネージャーの仕事のジャンル、各ジャンルにおける選択肢や工夫、各選択肢や工夫の利点・欠点等の基礎的な内容を、俯瞰的かつ体系的に整理する際に役立ちます。本科目では毎回2ジャンル程度を取り扱う形で、各分野の基礎理論を網羅的に学習していきます。理論の血肉化には、自らの実務や所属組織に当てはめてみる作業が極めて有効です。本科目では紹介した理論を当てはめる機会も、ふんだんに提供します。

▼海外展開基礎理論

担当教授:岸本 太一

成熟化状態から再成長に転じるための手段は、イノベーションだけではありません。未開のフロンティアは、海外市場にも広がっています。さらにいえば、海外展開を機に国内拠点の転換と進化が活性化することも、成功企業ではよく見られます。進出する国の検討と選択、進出先での競争戦略の構築、戦略実行を支えるサプライチェーンの国際分業と統合、各拠点への技術移転と現場の育成、開発機能の現地化と本国とのコラボレーション……。国際経営には業種や規模に関係なく、最低限踏まえておくべきトピックが存在します。そのようなトピックを視野狭窄にならずに考察する上で有用な基礎理論を、本科目では網羅的に学習していきます。海外展開の基礎理論には、国内におけるマネジメントやイノベーションにも役立つ内容が、実は少なからず含まれています。本科目では、学習した各理論を国内の実務に応用するための橋渡しをする機会も、あわせて提供していきます。

カリキュラム「社会連携科目」の紹介

▼先端科学技術特別講義

技術系、文系、芸術系など、多様なバックグラウンドを持つMOTの社会人学生が、最先端の科学技術研究に触れ、課題を共有し、具体的なケースを議論してイノベーションの理解を深める科目です。具体的には、東京理科大学を代表する研究者6〜7人から、最前線の研究動向の講義を受け、研究者としてのイノベーターの実態や、実用化に向けてのさまざまな課題を共有します。講義では、先端科学技術の内容を俯瞰しつつ、むしろその実用化や社会へのインパクトという観点を中心に、質疑応答や討論を行います。この科目は社会連携科目であり、MOTが理科大全学と連携を深め、かつ、社会人学生を通して、理科大の研究者と企業を繋ぐことも目的としています。東京理科大学という理系大学の強みを活かした、まさに先端科学技術の技術経営を学ぶことができる科目の一つです。

カリキュラム「演習科目」の紹介

▼実践CXO・起業家ケーススタディ

本科目では、大手企業の経営者、自らベンチャー企業を起こした起業家、不振企業の立て直しや再生を行った経営者などの方々をゲスト講師として招聘し、自身の体験に基づく講義(60分)の後に、学生との質疑応答や意見交換(60分)を行います。講師の実績を支えた実践思考と行動についての理解を徹底的に深める科目です。イノベーションを起こすCXOや起業家を目指す学生が、イノベーションを起こしてきた経営者や起業家などの経験を直接聞くことにより、これまで学んできた技術経営に関する知見を実践知として再構築し、そこから自らの企業や自身の現状を踏まえた「自分事」の課題として、今後の取り組みに活かしていくことを狙いとしています。ゲスト講師の講義、質疑応答や意見交換の後には、さらに複数の教員を交えた討論やグループに分かれての議論を行い、最後にそのグループワークの成果を発表することで、学生の理解を深めていきます。

▼実践ケーススタディ

担当教授:井上 悟志

本科目は演習科目「実践CXO・起業家ケーススタディ」と同様に、ゲスト講師が自身の体験に基づく講義(60分)の後に、学生と質疑応答や意見交換(60分)を行う形式の授業ですが、違いはゲスト講師が本学MOTの修了生である点にあります。受講する学生と年齢層が比較的近い企業のCXO、部課長、起業家の修了生が、イノベーションを起こすべく現在奮闘中の経験を直接聞くことで、学んできた技術経営に関する知見を実践知として再構築し、特に自身により身近となる「自分事」の課題として、今後の取り組みに活かしていくことを狙いとしています。あわせて、本学MOTでの学びを修了後どのように活かしているか、入学前と後でどう変わったか、グラデュエーションペーパーの執筆を振り返ってどう思うかなど、修了生の立場からのアドバイスもお願いしています。この振り返りや後輩の学生との議論は修了生にとっても大変、有意義な経験となっています。

▼ゼミナールエクササイズ

本科目は秋学期・冬学期に1年生が必修で履修する演習科目です。本学MOTでは、学生全員が技術経営に関連する研究を行い、その成果を最終提出物であるグラデュエーションペーパー(いわゆる修士論文に該当)へと仕上げていきますが、まず1年目後半からこの科目を通じて学生と教員が議論をスタートさせて、それぞれの学生のグラデュエーションペーパーの構想を検討します。1年生はまず秋学期の冒頭で、自分が参加する専任教員の研究室(ゼミ)を選び、そこでの検討や議論を通じて自身が目指す方向性や着眼点を整理します。そして自身が2年生で取り組む研究計画の骨子をその時点の成果として作成し、グラデュエーションペーパー作成計画書としてまとめます。このように1年生の後半から、グラデュエーションペーパーに取り組む活動を始めることで、1年半をかけてじっくりと技術経営をめぐる研究に取り組むことができます。

▼ゼミナール1〜4

本学MOTでは、学生全員が専任教員の研究室(ゼミ)に所属し、技術経営に関連する研究を行い、その成果を最終提出物であるグラデュエーションペーパー(いわゆる修士論文に該当)へと仕上げていきます。本演習科目は学期ごとに1~4に分かれていますが、2年生が年間を通して必修で履修する科目であり、この科目を通じて学生と教員が議論を積み重ねながら、グラデュエーションペーパーの作成を進めていきます。演習指導教員の指導下で、実践の理論化、企業・産業分析、各種インタビュー調査などを行うことにより、学生個々の課題の明確化、仮説の設定、課題解決案の構想の検討を推し進めていきます。このような学びを通じて、論理・実践能力を総合的に身に付けることを目指します。ゼミナール2(夏学期)の終わりには中間発表会、ゼミナール4(冬学期)の終わりには最終審査発表会が専攻内で開催され、そこで学生は自身の研究の成果を発表します。