カリキュラムについて

【2023年4月から、MOT3.0を始動】

東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻(MOT)は、社会(産業界等)の要請に合致する高度職業人材育成をさらに充実させるため教育課程を開発し、2023年4月からMOT3.0と呼ぶカリキュラムをスタートさせました。

教育課程の再構築のポイント
・科目部分を再構築。教育領域を細分化し授業科目を配置しています。
・演習科目以外の授業科目では、学生の多様性に合わせて必修科目を廃止し、授業科目を自由に選択できるようになりました。

科目区分/修了要件と履修要件

【科目区分について】

基盤科目
専門科目、社会連携科目および演習科目を履修し、グラディエーションペーパーに取り組む上で必要かつ共通の応用的知識や知見を習得する科目を配置する。

専門科目
学生のニーズに応える能力、グラディエーションペーパーを完成する上で、必要な専門的知見を習得する科目を配置する。

社会連携科目
イノベーションを起こすCXOや起業家を目指す学生が、必要とする知見を学ぶだけでなく、MOTのほか、本学他学部、企業や業界団体等と交流、連携していく科目を配置する。

演習科目
CXOや起業家を目指す学生が、イノベーションを起こしてきた経営者や起業家等のケーススタディに触れる等の機会を通じて、学んだ知見を総合的に組み立て、特別解として実践知を習得する科目を配置する。

【修了要件と履修要件について】

修了要件
2年以上在学し、以下の科目修得条件を満たし、40単位以上を修得すること。
①必修科目を全て履修し、修得すること。
②専門科目から20単位以上を履修し、修得すること。

履修要件
①ゼミナール1~4は、科目名の1~4の順番どおりに履修し、修得することを条件とします。
②授業科目により指定科目を履修し、修得していることを条件とする場合があります。
③1年間に履修科目として登録ができる単位数の上限は、34単位となります。また、半期に履修することができる単位数の上限は、28単位となります。

カリキュラム「基盤科目」の紹介

基本的なカリキュラムの「科目区分」と「授業科目」の紹介になります。

▼技術経営入門

技術経営入門は、東京理科大学技術経営専攻の門を開く入門科目です。専攻が提供する専門科目、社会連携科目および演習科目を履修する上での必要な基盤として、教育の全容を含む技術経営全般に関する知識・実務等について学びます。
専門職大学院の意義、MOTとMBAの違いや本カリキュラムの特長、グラデュエーションペーパーの位置づけを理解するとともに、容易には解が得られない課題にも挑戦してもらい、グループワーク・グループ発表の練習をします。
この科目を通じて、今後2年間、共に学ぶ同級生や教員から刺激を受け、また相互の理解を深め、共同作業の困難と喜びを実感し、実りある学びへと助走することができるでしょう。

▼経営戦略

戦略とは、事業活動の設計図であり、設計図を精緻に描くためには、座学で事前に基礎理論を習得しておくことが有効です。製品設計や工程設計の世界では、該当分野の基礎理論をテキスト等で学ばない状態で、設計の実務に着手することは、まずありません。ところが、戦略に関しては、なぜか「いきなり実務」の傾向が普及しております。
事業の成功には、技術開発だけでなく、戦略開発も不可欠です。本科目では、実務で戦略を策定する際に、自社や他社の戦略を分析する際に、最低限踏まえておくべき基礎理論を紹介します。そして、単なる紹介にとどまらずに、実際に
使ってみる機会をふんだんに提供することを通じて、理論の血肉化を目指します。

▼マーケティング

技術経営においてマーケティングが果たす役割を3つの観点から学びます。一つ目は企業が顧客満足や顧客経験価値をどう高め、顧客との関係性を構築するかです。二つ目には、いずれの事業においても原則、必要となる販売という機能実現のために、効率的・安定的な商品・サービス提供を行うためのB2C、B2Bのチャネル構築について学びます。三つ目としてデジタル化に伴うEC(電子商取引)やソーシャルメディアの活用の現状を理解した上で、企業が取り組むべき課題を検討します。
これらのテーマについて、理論と事例に基づく授業に参加することで、企業経営、事業あるいは個々の学生自身が取り組む研究テーマに応用ができるようにします。

▼ファイナンス

近年、アクティビストファンドやプライベート・エクイティの存在感が拡大し、企業経営における資本市場の重要度が急速に高まりつつあります。特に上場企業は、資本市場の要求する企業価値向上を実現する企業統治を実現する必要に迫られています。本科目では、企業価値に関する基本的なセオリーをファイナンスの観点から学ぶとともに、それを実現する企業統治のあり方について、学術的な視点も取り入れながら議論します。機関投資家、プライベート・エクイティ、CFO経験者などとの議論も交えることにより、理論的かつ実践的な知識を修得することを目指します。

カリキュラム「専門科目」の紹介

▼スタートアップサイエンス

イノベーションを駆動する主体としてのスタートアップへの注目度は急速に高まりつつあります。本科目では、スタートアップの成功確率を高めるプロセスを理解するとともに、起業家とのディスカッションを通じ、起業家精神と事業モデルの目利き力を養うことを目指します。また、学生自ら起業アイデアを発案・発表・議論することを通じ、起業の現実を体験し、自ら起業によりイノベーターとなる力を養います。起業を科学的に分析し、成功率を高める本科目は、最もMOTらしい科目の一つといえます。理科大発ベンチャーに投資し育成を図る東京理科大学イノベーションキャピタルと協働する、臨場感あふれる科目です。

▼標準化戦略

本科目は、標準化を戦略的に活用するための専門的知識・実務等について学ぶとともに課題解決に向けた実践力を身に付けることを目的としています。イノベーションの過程では、さまざまな標準が必要とされます。それを踏まえ、オープン・クローズ戦略、デジュール・デファクト標準等の基本的理解から、JIS等の国内標準に加えてISO/IEC等国際標準の仕組、認証・認定まで視野に入れた講義を行います。
また、国際標準化活動に豊富な経験を持つゲストを招き、国際標準化、より広くはルールメイキングに関して実践的な活用法について理解を深めます。本科目の履修を通じて、標準化戦略の本質を理解し、企業戦略として標準化を活用できることを狙っています。

▼科学技術・産業政策

本科目は、科学技術政策および産業政策に関する専門的知識・実務等について学ぶとともに課題解決に向けた実践力を身に付けることを目的としています。あわせて、イノベーションを起こす国家政策の概要や歴史と国際比較などについて学び、それを民間がどのように活用するか理解します。
科学技術政策および産業政策がどのように企画・立案・実行されるのか、そのメカニズム、具体的には行政組織、予算、法律、審議会等の仕組と機能等について基礎知識を身に付けるとともに、それを活用して政策立案過程を疑似体験します。また、実践力を養うために現役の政策担当者とのコミュニケーションを通じて理解の定着を図ることを狙っています。

▼マネジメント総論

マネージャーの仕事を10個挙げてみてください。この質問に対してスラスラと答えられる実務家は、実はあまり多くありません。マネジメントで失敗する主要な原因の一つは、視野狭窄にあります。組織構造の改変が喫緊の課題にもかかわらず、営業関連の施策ばかりに注力し、課題が一向に解消されない現象が、その典型例です。
経営学の理論は、マネージャーの仕事のジャンル、各ジャンルにおける選択肢や工夫、各選択肢や工夫の利点と欠点等に関する内容を、俯瞰的かつ体系的に整理する際に役立ちます。本科目ではそれらの基礎理論を網羅的に紹介します。
あわせて、紹介した理論を自らの実務や所属組織に当てはめる機会も、ふんだんに提供します。

▼イノベーションのための財務会計

本科目は、「アカウンティング」の基礎知識をベースとして、イノベーションの観点から財務会計を「戦略的に」活用するための専門的知識を学ぶ科目です。
本科目では、まず最適資本構成、日米の会計制度との違いなどを学び、会計制度の保守性・積極性とイノベーションや競争力の関係について学習します。M&Aに関連する税務・会計上の取り扱いを学習し、実務で応用できるようにします。また、実際に財務戦略を実践してきた企業のCFOや、スタートアップ企業に財務戦略をアドバイスしている公認会計士などをゲストスピーカーとして招聘し、ディスカッションを通じて、実務において生じうる課題を解決することができる実践力を身に付けます。

▼ビジネスエコノミクス

さまざまな経営課題の迅速な解決に向けて陣頭指揮にあたるにはCXOとして最低限、身に付けるべき経済学的知識が必要になります。どんなビジネス・モデルも、内的・外的な環境を踏まえた明快な経済学的ロジックとデータに基づく検証に因
らなければ絵に描いた餅となります。社会・政治的な環境が大きく揺れ動くと、それに伴い国内外のマクロ経済環境はどう動くのか、社内外のさまざまなアクターとの交渉・取引・契約はどのような経済的動機付けに基づいて動いていくのか。
実は、こうした課題はここ20年程で経済学がその解法に向けた糸口を明快に提供できるようになってきました。初歩的段階からCXOに必要な段階まで一気に解説します。

▼イノベーションを生む競争政策

これまで洋の東西を問わず、競争政策上の事例の大半は、問題とされた企業などが市場の流れを読み誤り、価格設定・事業統合戦略などの失敗に陥ってしまったことが、その真因であったとみられています。したがって、我が国に限らず、米・EU等の競争政策上の事例は、失敗例の宝庫です。
こうした事例を明日の成功の母と変えるために、初歩的な基本原則の紹介から始めて、GAFAMなどのプラットフォーム企業が問題とされた事例や最近の政策動向を紹介します。また、当局の幹部などの講義も交えつつ、さまざまな業界で働く学生同士のグループ討論を通じて、CXOに必要な知見を蓄え、新たなイノベーション戦略を生み出すための方策を探ります。

▼フィンテック戦略

MOTの学生にとって、金融分野における最新技術の現状を学ぶことは極めて重要であるといえるでしょう。本科目「フィンテック戦略」は、フィンテックについて最新の知識を得るだけでなく、これを企業戦略にどう応用するか、その社会への影響を考えることを目的としています。前半では、日銀や金融庁、あるいはビジネスの現場でフィンテックの最前線で活躍する担当者をゲストスピーカーとして招き、金融の基礎とフィンテック動向を学びます。また後半では、金融工学・クオンツを学び、機関投資家が行う投資戦略の構築に関連する演習(ブルームバーグ端末を用いたシミュレーション)を行います。

▼情報アナリシス

本科目では、グラデュエーションペーパーの作成に関して、
データを扱う分析を行うための、最低限かつ実践的な知
識と能力を修得することを目的としています。具体的には、統計分析の基礎から分散分析、重回帰分析、実務的に有効なアンケート調査の設計・分析の方法論などについて、個人ワーク、グループ演習を交えて学びます。さらに、ネットワーク分析を用いた演習や、ディーリングルームにてブルームバーグ端末を使った演習も行います。分野によっては、外部からゲストスピーカーを講師としてお招きし、実際のビジネスにおける分析例などを学びます。

▼コンセプト創造論

企業が厳しい競争に勝ち抜くためには、顧客や社会が共感する新しいビジネスコンセプトを創造していかなければなりません。世の中にまだ存在しない新しい商品、新しいサービス、新しいビジネスモデル、新しい販売・マーケティングの仕組み、新しい生産方式、新しいマネジメント方法など、経営のあらゆる場面で新しいコンセプトを創造することが求められています。
本講義では、多様なコンセプト創造の事例を通してその本質に迫り、良いコンセプトとは何か、コンセプトを創造し実現するために、情報収集・プロトタイピング・開発・事業化の各プロセスはどうあるべきかなど、基本的な考え方とスキルを身に付けることを目標とします。

▼ビジネスモデルイノベーション

ビジネスモデルにもイノベーションは起こっています。特に、デジタル時代と呼ばれる今、デジタルテクノロジーによる破壊的なイノベーション、いわゆるデジタル・ディスラプションがさまざまな分野で生まれています。「ビジネスモデル」は持
続的に競争優位を保つために重要であることが改めて認識され、革新的なビジネスモデルが生まれ、業界や企業が大きく変化してきています。
本講義では、ビジネスモデルとその変革について、具体的な事例とともに体系を学びます。ビジネスモデルの体系的な理解をもとに、新しいビジネスモデルを創造する構想力を養い、イノベーションの実現に役立つ示唆を得ることを目標とします。

▼人材マネジメント

近年企業の経営資源としての人材を重視する動きが強まり、さらに従業員を資本として捉えその価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営の考え方が広まっています。そこでまず経営戦略と連動する人材マネジメントのあり方を学びます。また人への投資は生産性向上だけでなく、イノベーションの推進に資するものであることから、技術経営との関連を踏まえる形で、人材マネジメントおよび組織、リーダーシップ、人材育成とキャリアの観点を検討します。
さらに人材に関わる人事評価、報酬管理などの具体的な施策の概要を学ぶことで、企業のCXOを目指す学生に必要となる人材マネジメント上の知識を修得します。

カリキュラム「社会連携科目」の紹介

▼イノベーション特別講義A(先端科学技術特別講義)

技術系、文系、芸術系など、多様なバックグラウンドを持つMOTの社会人学生が、最先端の科学技術研究に触れ、具体的なケースを議論してイノベーションの理解を深める科目です。具体的には、東京理科大学を代表する研究者6〜7人から、最前線の研究動向の講義を受け、研究者としてのイノベーターの実態や、実用化に向けてのさまざまな課題を共有します。
講義では、先端科学技術の内容を俯瞰しつつ、むしろその実用化や社会へのインパクトという観点を中心に、質疑応答や討論を行います。この科目は社会連携科目であり、MOTが理科大全学と連携を深め、かつ、社会人学生を通して、理科大の研究者と企業をつなぐことも目的としています。

カリキュラム「演習科目」の紹介

▼実践CXO・起業家ケーススタディ

本科目では、大手企業の経営者、自らベンチャー企業を起こした起業家、不振企業の立て直しや再生を行った経営者などの方々をゲスト講師として招聘し、自身の体験に基づく講義(約60分)の後に、学生との質疑応答や意見交換(約60分)を行います。講師の実績を支えた実践思考と行動についての理解を徹底的に深める科目です。
CXOや起業家を目指す学生が、イノベーションを起こしてきた経営者や起業家などの経験を直接聞くことにより、これまで学んできた技術経営に関する知見を実践知として再構築し、そこから自らの企業や自身の現状を踏まえた「自分事」の課題として、今後の取り組みに活かしていくことを狙いとしています。

▼ゼミナールエクササイズ

本科目は、1年生が後期に必修で履修する演習科目です。本学MOTでは、学生全員が技術経営に関連する研究を行い、その成果をグラデュエーションペーパー(いわゆる修士論文に該当)へと仕上げていきますが、まず1年目後半からこの科目を通じて学生と教員が議論をスタートさせて、それぞれの学生のグラデュエーションペーパーの構想を検討します。
1年生はまず後期の冒頭で、自分が参加する専任教員の研究室(ゼミ)を選び、そこでの検討や議論を通じて自身が目指す方向性や着眼点を整理します。そして自身が2年生で取り組む研究計画の骨子をその時点の成果として作成し、グラデュエーションペーパー作成計画書としてまとめます。

▼ゼミナール1〜4

本学MOTでは、学生全員が専任教員の研究室(ゼミ)に所属し、技術経営に関連する研究を行い、その成果をグラデュエーションペーパー(いわゆる修士論文に該当)へと仕上げていきます。本科目は学期ごとに1~4に分かれていますが、2年生が年間を通して履修する必修科目であり、学生と教員が議論を重ねながら、ペーパーの作成を進めていきます。担当教員のもとで、実践の理論化、企業・産業分析、各種インタビュー調査などを行うことにより、課題の明確化、仮説構築、課題解決案の検討を行います。
ゼミナール2の終わりには中間発表会、ゼミナール4の終わりには最終審査発表会が専攻内で開催され、そこで学生は研究の成果を発表します。