

2024年4月入学萩野 礼子
医療法人社団おはぎ 理事長
日本料理 甚三紅 オーナー
“底”まで考え抜き問いと実践を行き来して社会課題と向き合う
どこまでも考え抜く、という新体験
在宅歯科と飲食店の運営を通して「食べることを支える」という課題に取り組んできました。現場では、属人的になりがちな技術や判断をどう標準化し、継承していくかに長く悩んでいましたが、どこから手をつければよいのか分からずにいました。そんなとき偶然出合ったのが本学MOTです。説明を聞いた瞬間に「これだ」と直感し、迷わず出願しました。現場での課題を持ち寄り、異業種の仲間たちと議論できる環境は、私がまさに必要としていた場でした。
本学での学びはどれも刺激的ですが、私にとって別格だったのは内海先生の講義です。問いの立て方、思考の掘り下げ方、自分の甘さに向き合う作業は決して楽ではありませんが、「考え抜くとはこういうことか」と骨身に染みました。もやもやとした現場の違和感を構造化し、問いとして言語化できるようになったことや、答えが出ない問いにも考え続けられるようになったことは、“底”まで考え抜く訓練を積んだおかげだと思います。
問いを煮詰め、社会とつながる実践へ
なぜ “質の低い医療”が見過ごされるのか。長年、現場にいる私にとってそれは、仕事を続けるほどに膨らんでいく違和感でした。その違和感はやがて研究として向き合うべき問いに変わり、今、グラデュエーションペーパーの執筆へと至っています。書き始めた当初は「何が分からないのか」さえ分からない状態で、ひたすら自己の内面を掘り下げる日々。それでも違和感が少しずつ形を持ち始め、それと連動するように現場での視点や判断も変化していきました。
現在は在宅歯科に加え、外来型の分院や2軒目の飲食店など、さまざまな取り組みを進行中です。一見バラバラに見えるこれらの活動も、「健康をどう支えるか」「良いものをどう選んでいただくか」という課題に貫かれています。本学での学びは、抽象的な問題意識を構造として捉え、実行に落とし込むための視座を与えてくれました。今後も問いと実践を行き来しながら、社会と向き合い続けていきたいと思っています。