【山崎知巳】先日、理科大MOT修了生で企業経営者のラヤマパック 羅山社長にインタビューしてきました。

先週土曜、日曜は2年生の論文発表会でした。私は初参加でしたが、よく調査・分析された、また、それぞれ個性溢れる内容で、大変素晴らしい会でした。ある学生はMOTを「知のダイナミズム」と呼び、またある学生は「MOT、来たら人生様変わり」と詠み、理科大MOTで化学反応が起きたとすれば本当に喜ばしい限りです。

今回、3年前にMOTを修了した中小企業の社長さんを訪問し、その後のご活躍ぶりを伺いました。

 

【ラヤマパック 羅山社長】

2020年1月24日(金)午後、真空成形等によるプラスチック加工を行う企業、ラヤマパック(葛飾区)の羅山社長(理科大MOT12期修了生)を訪問し、インタビューして来ました。羅山社長から「今の僕は理科大MOTなしには考えられない」とのコメントをいただきました。また、初めての自社開発製品につき、MOTでどうやって売ったらいいか学んだ後、実際に注文が入った時に社員が皆ガッツポーズしたというのはいい話でした。羅山社長のコメント概要は以下のとおりです。

イノベーション研究科MOTの12期。2018年から経営学研究科MOTとして大幅改組し、2020年に改組後の第1期生が修了の運びである。

 

【通学時期・動機】

・私は12期生(2015~2017)で、同級生は約70人。

・当時はグローバル競争に晒されて、下請けの仕事がシュリンクしていく状況に、ビジネスへの危機感が強かった。このような時期に中国に法人を設立し、工場を建設した。でも世界との商取引の経験もなく、これからどうやっていったらいいのかと。また、一般の真空成形機は当社のように3m×10mと大きいが、違うことをやらなきゃいけないとの思いで小型真空成形機(V.former、写真)を自社開発した。でもこれをどうやって売っていったらいいのかと。何か生き残り策を考えなければという焦りの中、経営の勉強をしたいと思うようになっていた。

・いろんな話を聞く過程で、PTAで知り合った会社経営者(理科大卒)が、理科大にMOTがあるよと教えてくれた。自社(中小企業)の社員をMOTに行かせているとも聞いた。それで興味を持って調べるうちに、受かったら行ってみたいという思いが強くなっていった。

・社長が経営を学びに行くというのは当初恥ずかしかったが、入学後、社長が6、7人いることがわかった。

自社開発製品(V.former)の前で

 

【当時の雰囲気・印象】

・無事MOTに合格・入学すると、社会人学生の勉学への姿勢が真剣そのものだったのは驚きだった。みんな頭がいいだけでなく、発想が凄かった。企業からは将来の有望株が派遣されているし、自費で来ている学生もモチベーションを持って来ていた。

・自分自身はとにかく学べることをなんでも学ぼうという思いだった。シラバスに書いてあることはよくわからないし、管理会計という言葉も知らない状況。一年時には、平日は週3, 4日、もちろん土曜日もMOTに通った。知らない単語、言葉ばかりで、経営に関することはとにかく何でも貪欲に学ぼうと思っていた。

・授業での学生の発表も凄いけれど、そのフォローのための討論ができる、多様な考え方を吸収できる場だったのはMOTの特筆すべきこと。12期の皆と授業が終われば神楽坂の飲み屋で喧々諤々議論したり、プライベートの話をしたり。ここが大事だったと思う。飲みに誘われれば断ったことがない。皆勤賞である。

 

【MOTに行く前後で変わったこと】

・卒業後にM&Aにより会社を2社取り込んだことで、企業規模は20強の社員数から83名へと約4倍になった。M&AはMOTに行かなければチャレンジしていなかった。キャリア経験豊富な幸(みゆき)先生(指導教官)に当時相談したし、卒業後もアドバイスを頂戴した。

・個人としての自分も大きく変わった。MOTでは自分が真空成形をやっている2代目だという話をよくしていたからか、論文発表後に幸先生から「親父から真空成形をやり続けるという制約条件つきで会社を引き継いだのか」と指摘された。いつの間にかそういう思考回路になっていた自分に気が付いた。今や真空成形だけでなく射出成形、ブロー成形等にも加工の幅を広げている。

・他の先生からは、卒業時に一言「高度を上げ下げしろ」という言葉をいただいた。モノを見るときに同じ視線で見るのでなく、上げ下げして見ろと。とにかく、異なる視点、視座の重要性を教わった。

 

【実際に役に立っていること】

・戦術、戦略もさることながら、フィロソフィーを植え付けてもらった。とても考え方が広がった。MOTに通う前の自分は、社長と言いながらプレイングマネージャーで、どちらかというとプレーヤーとしてのウェイトが高かった。今はマネージャーであることを意識して動くように心掛けている。

・会社の経営理念(「我が社を自己実現のフィールドにする」)とクレド(信条)(「正しい道を歩む。世の中に役立つ製品を創る。」)はMOT後に作った。

・戦略、戦術という意味では、経営上のマトリックス的な思考方法、フレームワークがとても役に立っていて、それをスキルとして当社で応用できている。フレームワークを知っていると、モノの考え方が違ってくる。社員と話す時にそういう手法を使って議論することは今もやっている。そうすると、お互いに分かり合えるようになる。以前の自分なら文章、言葉で伝えようとしていた。それをもっと整理して可視化することで理解の深さが違ってくる。

・小型真空成形機(V.former)どうやって売ればいいか。先生にお願いしてエクストラセッションとしてケーススタディに取り上げてもらい、当社を題材に3チームで競って発表してもらった。この発表資料は自分の宝物であり、今でもちょくちょく見直している。とても嬉しいことだったが、先生からは「羅山さんがMOTで一番元を取った」と言われた。(笑)

 

【その後の当時のみんなとの付き合い】

・同級生とは今でもずっと繋がっている。明日もその一人が新型真空成形機V.former Labのお披露目会参加のため当社工場に来る予定。

・毎月12日に12期会と称して同期と会っている。今は少人数になっているが、受入体制を作っておけば、地方から来ても会えるし。貴重な情報交換の場となっている。

 

【最後に】

・繰り返しになるが、このまま日本でのやり方を踏襲していてはやっていけない、新しい市場を作ろう、真空成形をもっと多くの人に使ってもらおうと。それなら手軽に扱える簡単な真空成形装置を作ってみようと考えたが、機械製造の専門家は社内にいないし、経験もない。ただ、真空成形加工についてはプロフェッショナルである。どうしようかと思い悩んでいた。加工屋が作ったらどうなるか、新しい市場ができるのではないかという期待感を持って。その機械をインターフェースにして、誰かが新しい市場を作ってくれるのではないかと。結果は、ハリウッドも小道具作成のために買ってくれたし、日本でも多くの有名企業が採用してくれている。

・当時は図面どおりに作る下請け仕事ばかりで、自社商品を持ったことなかったので作ったはいいが、売り方がよくわからなかった。ただ、インスピレーションがMOTから得られた。自社商品をどうやって売っていけばいいか、これが学びの目的だったかもしれない。同時に、海外展開も学問の経営を通じて見直すとどうなるかということを学んだ。

・「具現化工場(想像する試作品を簡単に作れる工場)」は経産省スタートアップファクトリー構築事業に採択された。情報に人が付き、人に仕事が付く。情報はMOTにいっぱいあった。そこに人が集まっていた。僕はそれをここに持って来ている。卒業後もそれは続いている。自分にとってMOTがなければ具現化工場は実現できていないし、M&Aもやってない。今の会社、自分自身の存在もない。

・ここにきて自分の考えている経営を文章にできるようになった。今やっているのは二階建ての経営。下請け時代は平屋建ての経営。潜在的な顧客との間に誰かいると気づかないことが続いていた。V.formerを二階に乗せて潜在顧客が目立つようになってきた。お客さんが見に来てくれる、二階で社員が生き生きとやってくれる。若い子も定着してモチベーション高くやれている。これは自社商品を持ったことが大きい。某自動車メーカーの研究所にも納品できた。自分が不在の時にその注文を受ける電話があって、電話を切った後に事務所のみんながガッツポーズしたと聞いた。

・一階を太くして、二階も乗っけて、社員も楽しめるようになる。二階建て経営と意識したのは、もちろんMOT後のことである。

(以上)

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