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活動紹介

【生越由美】2022年8月29日(月)「特許ニュース」に論文が掲載されました。

一般社団法人 経済産業調査会が発行している「特許ニュース」のNo15725 に『超スマート社会における知財戦略(26)』が掲載されました。概要は下記です。
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「第2節 バイオエコノミー」について引き続いて検討した。今回はドイツと中国のバイオエコノミーに関する政策である。
◎ドイツ
1996年に連邦教育研究省(BMBF)が実施したバイオ技術を核としたベンチャー育成のためのクラスタープログラムがその発展の大きな要因と言われている。
1960年代のドイツは、自動車、化学、機械、鉄鋼などの産業基盤があまりにも強固だったので、IT技術、エレクトロニクス、バイオテクノロジーといった新規産業への取り組みに出遅れた。その結果、1990年代前半は経済不況に陥った。1990年の東西ドイツ統一がさらに経済状況をさらに悪化させた。また、当時のドイツはバイオ分野への参入に抵抗感が強かったため、ドイツ国内の製薬企業は規制の少ないイギリスやアメリカに研究拠点を移転した。ドイツはバイオ分野で大きく遅れを取った。
転換点は、1996年の「クラスター創生プログラム」である。「ビオ・レギオ(BioRegio)」に代表される。地域に集結しているバイオ技術に強みを持つ企業や大学を有機的に結合し、ドイツ政府は遺伝子技術研究の規制を緩和し、積極的なバイオテクノロジー推進施策に転じた。成功の要因は、このプログラムの運用方法にある。この結果、1999年にバイオの先進国のイギリスのバイオ企業数(275社)をドイツの企業数(279社)が抜き、欧州一となった。
その後、イギリスとアメリカは対抗措置を取った。
◎1998年 ポーターの「クラスター理論」
「クラスター」という概念は、古くは1890年のマーシャルが『経済学原理』の中で、専門化した産業立地の外部効果について議論している。
競争戦略としては1998年に米国のハーバード大学のマイケル・ポーターによる『クラスターと競争(1998年):日本では『競争戦略論Ⅱ(1999年)』が世界的にクラスターという用語を有名にした。
具体例として、「カリフォルニアのワイン・クラスター」と「イタリアの革靴とファッション・クラスター」の2例が示されている。ワインの例で言うと、ワイン製造に関わるぶどう農家や醸造所、生産側(肥料、設備、瓶、ラベル、醸造機器など)、州政府、大学(カリフォルニア大学デイビス校ワイン研究所)、また観光や食品に関わる産業で構成されるクラスターである。
筆者も理科大MOTの『地域産業資源と伝統技術』の授業で参考にしている。
◎中国の動き
中国は「バイオエコノミーの政策」は保有しないが、バイオテクノロジーに関する技術は2000年頃から大きく進展している。イネゲノムの解析競争の頃である。これらは特許出願件数などに表れている。
2006年、国務院から「国家中長期科学技術発展計画綱要(2006~2020 年)」と「国家イノベーション駆動発展戦略綱要(2016~2030 年)」が発表され、バイオテクノロジーやライフサイエンスが重点分野として挙げられた。(中略)
2015年、国務院から発表された「中国製造 2025」において、バイオ医薬品等のバイオ産業の国際競争力強化が掲げられた 。(中略)
2022年5月10日、この中国の国家発展改革委員会が「世界トップレベルのバイオエコノミーを目指す計画 」を発表した。第14次5カ年規画を期間の途中で変更した。
バイオ技術を生産技術として捉えての政策変更と考えられる。バイオ以外の産業の関係者にもバイオ技術に関心を寄せて欲しいと思う。

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