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平塚 三好教授 志史 - 技術、知財、グローバルビジネス、政策を縦横無尽に思考し、学生と教員との練磨・研鑽の先に新たなイノベーションがある -

2017/08/29掲載

【大学院時代:人工知能の研究に没頭】
理科大の応用物理学科に入って幅広く学びながら、自分の進む道を考えればいいと思っていたが、すぐには方向性が定まらなかった。大学3年になり卒業研究のテーマを決める段階になって、有機半導体の分野を選択する。有機半導体の研究を極めれば、人間と同じような皮膚をもったアンドロイドに行きつく。とても夢のある分野だと思った。

ところが、スティーブ・ジョブズらが開発したMacintoshが鮮烈なデビューを果たした。これからはコンピュータの時代だと衝撃を受け、方向転換。猛勉強のすえ、大学院に進学し、人工知能の研究室に入る。研究が面白くて、毎晩徹夜しても苦にならないくらい、のめり込んだ。今でも人工知能の研究を知財・技術経営と並び、継続している。
当時の研究で忘れられないのは、航空機の種類を自動的に判別し、捕捉するプログラムを完成させたことだ。この研究実績が認められ、博士課程に残ることを指導教員から勧められた。しかし、一生、研究者として生きていくことに対し、迷いがあった。
一方、日本企業が米国から特許権侵害で提訴され、敗訴するということが相次いでいた。日本は優れた技術で世界第二の経済大国にまで成長し、 脅威を感じた米国が訴訟という形で日本を攻撃しているように映った。
当時の日本はバブルに浮かれていたが、この浮かれた世の中に危機を感じ、米国から日本を守らなければという使命感みたいなものが職業選択の動機となり、再び大きく方向転換した。米国のプロパテント(特許権重視)主義に学び、日本企業が米国に訴訟で負けないように特許の道に進もうと決意した。特許は、飛行機、船舶、自動車、家電、半導体などあらゆる分野の産業に関われる。研究者として一つのことだけに没頭するよりも面白そうだった。

【米国時代:ロー・スクールと法律事務所でのベンチャー経営支援】
知財の道に進むことは決めたものの、生まれ育った工務店経営の家庭では、どんなビジネスでも職人でも営業経験は不可欠だと大工の棟梁だった父親から常々言われていた。一度は経験したいと思い、最初は営業職として企業に就職した。その後、国際特許事務所に転職し、入所5年目で米国のロー・スクールへの留学を命じられた。 フランクリン・ピアース・ロー・センターで学ぶことになった。MIP (Master of Intellectual Property)コースを世界で最初に設置したロー・スクールだった。毎日大量の文献を読んで予習しなければ授業についていけない。半年ほどでドロップアウトする人も少なくなかった。しかし、会社の期待を背負っているだけに挫折するわけにはいかない。 支えになったのは、長年続けてきた極真空手だった。挫けそうなときには、 空手の黒帯を机の前に置いて、睡眠約3時間の日々をこなした。
ロー・スクール生活で得たものは勉強だけではなかった。米国人の政治や経済、科学技術に対するマインド、訴訟における闘い方を目の当たりにすることができたのは貴重な体験だった。米国だけでなく世界からのエリート留学生の友人も多くできた。各国から集まった留学生からも様々なことを学んだ。
なんとか1年間でMIP を取得したが、すぐには帰国を許されず、現地の法律事務所2か所に駐在することとなった。最初はカルフォルニアで、次は自動車産業の盛んなミシガン。1999年当時の米国は、ITベンチャー起業ブーム華やかな時代で、多くのイノベーションとビジネスモデルが開発され、その頃、Googleが誕生していた。ITベンチャーの立ち上げから事業全般まで知財だけでなく経営全般の支援を行った。これが非常に良い経験となった。
帰国後、米国の訴訟攻撃から日本企業を守るという使命感に燃え、 事務所に恩返しをするつもりで仕事に打ち込んでいた。
そんな折、 理科大から一本の電話がかかってきた。それは、理科大に戻って知財教育に協力せよとの要請だった。平塚をよく知る大学院時代の当時の就職指導教員だった。当時はバブル時代で、学生は売り手市場だったのに、特許などという当時は日陰の分野に進みたいと言った私のことを変わった学生だと覚えていた。

【知的財産を守ること:国益を守ること】
技術では勝ったが日米特許戦争で負け、結果的にビジネスに負ける。 それが当時の日本企業だった。新興国が日本に追いつき、日本企業の技術やノウハウが模倣される立場ともなった。これに対し、米国が日本にしたのと同じように、 訴訟をしてでも知的財産を守らなければならない。知的財産の仕事は、科学技術立国たる日本の技術・産業・経済を守る自衛隊のようなものだと思っている。
今、 懸念しているのは、第四次産業革命における日本である。経済産業省の“第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会”座長代理や、“第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会”委員を務めながら、ドイツのインダストリー4.0や米国のIoT等の第四次産業革命において、世界をリードするように政策や企業戦略を考え続けている。
これが、新しいMOTでの平塚研究室の大きな研究テーマである。知財だけの限定された領域ではなく、政策や技術経営・ビジネスモデルの観点からソリューションを研究していく。

【技術経営教育の時代:知財・国際企業法務を経営に活かせるMOT人材の育成】
人工知能の研究と実用化システムの開発というイノベーションに取り組みつつ、米国時代のITベンチャーの経営支援の経験を活かし、知財・国際企業法務を経営に活かせるMOT人材の育成に邁進したい。
 特に、入学されるMOT院生の皆さんとともに、駐在時代の米国のように、多くのイノベーションとベンチャーが次々と生まれ、活力と夢にあふれた日本経済の創造に向け、共に練磨・研鑽していきたい。
 志ある皆さんが新MOTの門戸を叩くのを楽しみにしている。
  以上

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