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自動運転技術の物流への活用可能性

2017/02/09掲載

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荒木勉先生(平成29年4月1日着任予定)

ご着任前とはなりますが、荒木先生から寄稿いただいた『自動運転技術の物流への活用可能性』を掲載いたします。

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政府は2020年を目処に自動運転レベル3、2025年を目処にレベル4の市場化が可能となるよう研究開発を進めるとしており、そう遠くない未来においてドライバが運転操作を行わない自動車が公道を走行している可能性がある。
この自動運転技術は物流業界における活用も強く期待されている。過去、国土交通省は「2015年には14万人のドライバが不足する」と試算したが、2016年時点で、この予測ほどドライバ数が逼迫しているわけではないが、近年の物流業界においてドライバが慢性的な不足傾向にあることは事実である。また、EC市場の持続的な成長を背景とした小口宅配に対するニーズの増大・高度化が労働需給環境の逼迫に拍車をかけている。
国土交通省が発表している「宅配便等取扱個数の推移」によると、1984年度に3億85百万個であった宅配便等取扱個数は、1989年度に10億個を突破しており、2015年度は37億45百万個となり、1984年度の約10倍の数量となっている。自動運転技術は、このような物流業界が抱える課題を解決するためのひとつの答えになる可能性がある一方、実現性や課題の明確化、活用可能領域について検討する必要がある。
高速道路における自動運転について、トラックの隊列走行がすでに検討されている。例えば3台のトラックで隊列走行を行う場合、先頭車両のみ有人で運転し、2台目、3台目は先頭車両を追従して自動で走行する。仕組みとしては、先頭車両のアクセルやブレーキなどの作動情報やGPS情報を通信で全車両が共有し、同時にカメラで車線を認識しながら隊列を維持・走行することが考えられる。技術的な観点で言えば、これらは既に自動車メーカ各社が発表している技術の延長線あるいは複合であり、実現する可能性は十分にある。事実、試験的に自動運転車が隊列走行を行っている報道や2019年度には実際の走行実験を行うといった報道もなされている。懸念事項となるのは「他の有人車両とのすみ分け」および「高速道路から一般道路へ移る際の対応」である。
「他の有人車両とのすみ分け」については、隊列走行近辺を走行する有人車両が隊列の間に割り込むなど「隊列を乱されることが外的要因により発生しないか」あるいは「発生したとしても隊列の維持に支障が生じないか」が重要となる。自動運転社会の黎明期においては、有人車両と自動走行車が混在する社会となることが確実であり、黎明期ならではの問題に対して解決策を講じる必要がある。例えば「隊列が乱れた場合、無人運転車は隊列の復帰を試みながらも先頭の有人車両との通信をベースとした自律走行を行い、目的地を目指す」「自動運転・隊列走行専用レーンを設けるなど、そもそも隊列間に他の車両が入らないよう必要な施策を講じる」などが必要な要件になる。
「高速道路から一般道路へ移る際の対応」については非常に難しい。物流業界において各事業者の業態や貨物はさまざまであるが、発着が高速道路内で完結することが非常に稀であることは共通している。高速道路はあくまでも陸路での移動・輸送を効率よく、スピーディに行うためのツールである。物流の業務は一般道路にて貨物を積載し、高速道路を経由したうえで一般道路に復帰し、目的地に貨物を降ろすことであるため、例え高速道路での用途を主とした隊列走行であったとしても、一般道路における自動運転技術、ルールについても一定以上確立されていなければならない。仮に隊列走行における2台目以降の車両についても運転手を乗せ、高速道路内は自動運転、一般道路は人的操作によるという手法をとった場合、ドライバ不足、労働需給環境の逼迫に対する答えとはなりきれず、手段と目的が逆転した本末転倒状態となってしまう。
上記を踏まえると、高速道路における自動運転の確立に向けては、物流網のあり方を変革させる必要がある。例えば、高速道路のサービスエリアを物流のハブ拠点としてSA物流ハブと呼び、これを運用し、有人運転により出発地近隣のSA物流ハブまで貨物を輸送する。自動運転車に積み替え、集約された貨物は隊列走行によって目的地近隣のSA物流ハブまで輸送を行い、そこで再度有人運転車に貨物を積み替え、一般道路を走行して輸送を行うなどが考えられる。このスキームにおいて、ドライバは長距離を走行することなく、自分が居住するエリア近辺のみ運転することとなるため、ドライバの労働環境は改善することとなり、ドライバ問題に対しては間接的ではあるものの、ひとつの答えになる可能性がある。ただし、サービスエリアのキャパシティや物流時間軸の維持などの新たな問題が発生するかもしれない。
(出典:自動車技術 Vol.71、No .1、2017)

 

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