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平成27年度第1回MOTイブニングセミナー「どうすれば組織・ヒトがイノベーティブに変わるか」を開催(10/7開催報告)

2015/11/20掲載

平成27年10月7日(水)、神楽坂校舎PORTA神楽坂にて、平成27年度第1回MOTイブニングセミナーを開催しました。講演者は、東京理科大学大学院イノベーション研究科MOT専攻の高橋克徳教授で、テーマは「どうすれば組織・ヒトがイノベーティブに変わるか」。当日は定員80名に対し約200名の応募があり、熱気あふれるイブニングセミナーとなりました。





【自分の会社やヒトがイノベーティブでない理由とは】

高橋教授の本業はコンサルタントで、2012年度から本MOT専攻で教壇に立っています。野村総合研究所、ワトソンワイアットで企業の組織・人事コンサルティングの実務を経験後、2007年に「感情とつながり」を基軸にしたコンサルティング会社ジェイフィールの設立に参画。現在、同社の代表取締役社長として、人と組織の変革に向けた研修やコンサルティングを行っています。

講演では、最初に、高橋教授がジェイフィールを設立した経緯を紹介。「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだと、一つでもいいので心から子どもたち、若者たちに語れる大人を増やしたい。そんな大人が増えなければ、日本は、日本企業は、未来の子どもたちに見捨てらえてしまうのではないか。このような思いから、ジェイフィールを設立しました」と語りました。

次に、講演の本題となる最初のテーマとして、受講者に対し、「あなたの職場はイノベーティブですか。そうでないとすると、それはなぜですか」と問いかけた上で、2013年12月にジェイフィールがWebアンケートを実施した結果を紹介。それによれば、「自分の会社は、革新的な商品やサービス、事業を継続的に生み出している企業である」と回答した人は約8%に過ぎず、一方で、「事業開発、新商品や新サービス、業務改革が生まれない状況です」と回答した人は約46%にも及んだといいます。

さらに、新たなアイデアや取り組みが出ない理由として、「目の前の仕事に追われ、余裕がない、時間がない」と回答した人が全体の約77%にのぼり、特に、1001名以上の社員を持つ大企業に所属する人に至っては、約97%がこう答えたといいます。また、「新たなものを生み出すプロセス、思考の仕方が共有されていない」「余計なことはしない、リスクがあることはしないという意識が強い」と回答した人も50%近くに及んだとのことでした。

高橋教授は、このような状況が起こっている背景として、職場のタコツボ化による「閉じこもる働き方」、関係性の希薄化による「お互いが見えない職場」、方向性の喪失による「対話や議論ができない職場」の3つのループから抜け出せないことを挙げ、その結果、「働く喜びが見いだせない」「仲間の大切さが分からない」「思いや志が出てこない」という状況に陥っているのだと説明しました。

そして、助け合えないギスギスした「不機嫌な職場」の状態が続けば、将来に希望や期待が持てない「あきらめの職場」になってしまうとし、そうならないためには、信頼感があり、自分の役割を前向きに果たせる「協力し合う職場」、さらには、お互いが知恵を出し合え、組織力が発揮でき、イノベーションを起こせる「共創する職場」へと向かっていく必要があると強調しました。

【今、求められているイノベーションとは何か】

そもそもイノベーションとは何でしょうか。それに対し、高橋教授は、「日本に『イノベーション』という言葉が入ってきたとき、『技術革新』と誤訳され、新たな製品開発、生産技術のことであるととらえられました。しかし、イノベーションを提唱したオーストリアの経済学者シュンペーターは、『イノベーションとは新結合』であると言っています。これは、ゼロから何かを生み出すのではなく、何かと何かを結び付けて、新たなものを生み出すという意味です」と説明。さらに、本MOT専攻の元研究科長でもある伊丹敬之教授の「イノベーションは社会的プロセスである」という言葉を紹介し、「新しい技術を使って新しいことをやることがイノベーションであると考えると、本質を見失ってしまいます。そうではなく、その新しいことによって、社会がどのように変わるのか、人々の暮らしがどのように変化するのか、誰をどう幸せできるのかをきちんと見ていくことが大切です」と強調しました。加えて、一橋大学の野中郁次郎名誉教授の「イノベーションは知識創造のプロセスである」という言葉の意味についても紹介しました。

その一方で、高橋教授は、米国の経済学者クリステンセンが1997年に発行した著書「イノベーションのジレンマ」の中で述べられている「経営者が優秀で、優秀な社員を抱えた優秀な企業からは、業界の地図を塗り替えるような新技術(破壊的イノベーション)は生まれてこない。破壊的イノベーションを担う事業はスピンオフせよ」という言葉を紹介し、「では、イノベーションはどこから起こるのでしょうか」と問いかけました。

そして、まず、インド出身の経営学者ビジャイ・ゴビンダラジャンの著書「リバース・イノベーション」を紹介し、「イノベーションの本質的な解は、富裕国よりもむしろ新興国にあるかも知れません」と述べ、その具体例として、GEヘルスケアが開発した小型の「ポータブルエコー」を紹介しました。中国の山間部などで簡易的でも診断できる超音波診断装置を開発し、それがもとになってできた製品なのですが、それが今は先進国の救急車などでも採用されている。こうした本質的なニーズを再度掴み取れば、新たな市場を創り出せる。その上で、「このように、必ずしも最先端の技術を開発する必要はなく、本当に世の中の人にとって役立つ製品を開発するという発想の転換が、イノベーションには必要なのではないでしょうか」と語りかけました。

次に、ダイソンの羽のない扇風機や任天堂のWiiなどを取り上げ、「デザイン思考とは、かっこいいデザインをすることではなく、意味を問い直すこと、意味づけをすること。意味を組み替えることで、技術も再定義される。技術は、存在意義を持たなければ、世の中を変えることはできない。その変わる瞬間を作り出すことが大事なのです」と説明しました。

加えて、イノベーションの基軸には変化が起こっており、これまでの「企業目線」「Whatの追求」「傑出した1人の技術者」「自社だけの囲い込み」に対し、今後は、「社会目線」「Whyの探求」「フラットな対話で知恵を結ぶ」「取引先、顧客と作り続ける」ことが求められていると述べました。

そして、「世の中の面白い製品は、どうやって製品化され、世に送り出されたのかについて、一度真剣に考えてみて欲しい」とした上で、「今は面白いアイデアと商品が生まれると、それが一気に世界を駆け巡る時代。後追いしても、追いつけない。未来への思いが強い人たちが、世界を変えていくのです」と呼びかけました。

【どうしたら組織もヒトのイノベーティブになれるか】

でも、どうしたらそんな思いを形にし、未来に向けてイノベーションを起こしていける組織をつくれるのか。高橋教授は、組織をイノベーティブにするためのステップとして、ステープ1「関係革新」、ステップ2「仕事革新」、ステップ3「未来革新」が必要であると述べました。

関係革新とは、コミュニケーションの土台作りであり、相互理解のための対話を行い、認め合う関係を構築することです。また、仕事革新とは、仕事の仕方を変えてレベルアップすることや“Why”に基づく仕事への意識革新を行うことです。そして、未来革新とは、新たなものを生み出し、顧客価値を高めることやビジョンの基づくコラボレーション革新を起こすことです。

それに対し、高橋教授は、「未来は自分たちの手で変えられるのだという思いの連鎖を作ることが大切です」と述べ、まず、関係革新については、「職場の感情は、『イキイキ感情(高揚感)』『あたたか感情(安心感)』『冷え冷え感情(不安感)』『ギスギス感情(緊張感)』の4つに分類できますが、あたたか感情をベースにすることが大切です」と説明しました。

また、仕事革新に関しては、「個々人の成果のために互いが支援し合い、連携しながら互いの力を引き出し合う関係性を作り出す、リレーションシップを構築することが大事である」とし、ジェイフィールで開発した支援ツールなどを紹介しました。

そして、未来革新に関しては、(1)社会への感度を高める(2)本質、自分の原点を探求する(3)発想のプロセスを変える(4)共感者とともに創り育てるという4つのサイクルを回して組織としての感度を上げていくこと、発想の起点とプロセスを組み替えることがポイントになると述べました。

加えて、時代の変化が激しく、スピードと多様性が重要視される中、未来革新を担う新たなリーダーが求められており、それは、20世紀型のピラミッド構造の上に成り立った、戦略リーダーや管理マネージャーといったリーダーシップではなく、他者とつながり、他者とともに方向を定め、ともに動き出せるコネクティングリーダーであるとしました。

最後に、「我々は、今、未来志向のリーダーを作るべきであり、最もイノベーティブにならなければならないのは、実は組織のありかたそのものなのです。皆さんには、自分の組織をイノベーティブにしていくとは何か。そのためには何が大切かを常に考え続けて欲しい」と述べて講演を終了しました。

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