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平成26年度第2回MOTイブニングセミナー『行動観察で価値を創る』を開催(6/11開催報告)

2014/06/30掲載

平成26年6月11日(水)、神楽坂校舎PORTA神楽坂にて、平成26年度第2回MOTイブニングセミナーを開催しました。講師は、著書『ビジネスマンのための「行動観察」入門』などで注目を集める大阪ガス 行動観察研究所の常務取締役・松波晴人氏、題目は『行動観察で価値を創る』でした。

当日は、梅雨空にもかかわらず、定員80名に対して応募者数251名という高い倍率をくぐり抜けた受講者たちが続々と会場に集まり、補助椅子が出るほどの盛況ぶりでした。

講演では、最初に、松波氏が大阪ガスに行動観察研究所を創設した経緯、次に、行動観察とはどのようなものか、さらに、松波氏がこれまで取り組んできた行動観察の事例などが紹介されました。講義後の質疑応答の時間には、受講生たちから数多くの質問が寄せられ、関心の高さがうかがえました。



【欧米では日本の10年以上も前から注目されていた「行動観察」】
講演の冒頭で松波氏は、まず、2009年に大阪ガスに行動観察研究所という組織を創設した経緯について紹介されました。

松波氏は、大阪ガスに入社後、1999年にコーネル大学大学院に留学した際に、初めて人の行動を観察してビジネスに生かす「行動観察」という手法と出合われたとのこと。そして、2001年から大阪ガスにおいて行動観察を始め、帰国後の2005年、行動観察ビジネスを開始。さらに、2009年に大阪ガスに行動観察研究所を創設し、所長に就任されたとのことです。

現在は、例えば、「サービスを科学する」といったテーマで、これまで勘や経験の側面が強かったサービスや価値創造において、(1)観察、(2)分析、(3)ソリューションという3つのステップで、科学的にアプローチすることによって、企業が生産性向上や新たな価値創造につなげられるよう、支援しているそうです。

次いで、松波氏は、「イノベーションの潮流と行動観察」について話されました。

行動観察という手法は、日本では、松波氏の活動により、最近になってようやく認知度が上がってきましたが、欧米では、すでに2004年には行動観察をビジネスに生かすための学会『EPIC』が設立され、同学会が開催するシンポジウムは活況を呈していたといいます。また、IBMやインテル、マイクロソフトなどは、人間の行動観察の研究に不可欠な、人間工学やエスノグラフィー、環境心理学、社会心理学、人類学などの研究者を雇い、ビジネスの現場に送り込むことで、イノベーションに結びつけていたそうです。

次に、松波氏は、行動観察の有用性について説明されました。

従来、市場調査を実施する場合、アンケートやインタビューが一般的です。しかしながら、アンケートやインタビューを実施するには、先に“仮説”が必要であり、その仮説を立てるというのが、すべてのビジネスにおいて大きな課題となっていました。また、アンケートやインタビューの場合、相手がすでに気づいている回答しか得ることができません。

一方、行動観察には、相手も気づかないような潜在ニーズを掘り起こすことができるというメリットがあるといいます。そのことを分かりやすく説明するため、松波氏は、心理学の分野の「ジョハリの窓」と呼ばれる、対人関係における気づきのモデルを紹介しました。「ジョハリの窓」には、「開放の窓(公開された自己)」、「秘密の窓(隠された自己)」、「盲点の窓(自分は気がついていないものの、他人は気づいている自己)」、「未知の窓(誰からもまだ知られていない自己)」の4つがありますが、行動観察は、「秘密の窓」「盲点の窓」、さらに、従来の方法では難しかった「未知の窓」を開くのに、大変有用な方法論であるとのことです。

【「行動観察」により予想していなかった事実が次々に判明】
次に、松波氏は、これまで取り組んできた行動観察の事例をいくつか紹介されました。

最初に挙げられたのが、建材・住宅設備機器メーカー大手の『リクシル』が開発したビルトンインガスコンロ「ひろまるコンロ」です。これは、主婦の行動観察に基づきデザインした商品で、2013年のグッドデザイン賞を受賞しています。

次に挙げられたのが、高齢者を対象とした新規ビジネス創出のための行動観察です。最初は、「高齢者がどのようなサービスを求めているのか」、「高齢者に対して、どのような価値を提供すべきか」というインサイトを得るため、属性がそれぞれ異なる5人の高齢者の行動観察を開始したそうです。

ところが、高齢者を行動観察して得られたインサイトは、予想とはまったく異なるものでした。高齢者は、人から価値を提供してもらうよりも、「誰かに価値を提供することで、自分の存在価値を実感したい、認めてもらいたい」という思いのほうがずっと強いということだったのです。

その結果、新規ビジネスを創出する上では、想定していた枠組みから、まったく新しい枠組みへと、“リフレーム”が行われたとのことです。それに対し、松波氏は、「行動観察によって明らかになった“事実”を、どのように“解釈”するかが鍵となります」と強調されました。

加えて、松波氏は、「日本が、中国に提供できる付加価値に何があるか」を調査するために実施した中国人観光客の行動観察についても、映像を交えながら紹介されました。

この行動観察から分かったことの1つが、「デパートの靴売り場では、店員がひざまずいて靴を履かせてくれる」、「夜行バスにはカーテンが付いていてプライバシーが守られる」など、日本ではごく当たり前と思われがちなきめ細かいサービスに対して、中国人が、非常に感激しているということでした。

さらに、「優秀な営業マンと、ごく一般的な営業マンとの違い」についても、行動観察により、新たな事実が明らかになったといいます。これまで優秀な営業マンは、「顧客に対するプレゼンテーションがうまいのだろう」と思われがちでした。ところが、実態は、話し上手というよりもむしろ聞き上手であり、顧客にとっては有能なカウンセラーであることが、多くの優秀な営業マンに共通する特徴だったそうです。

その結果、営業マンに関する研修プログラムは、従来の「プレゼンテーションスキルを向上させる」というカリキュラムから、「顧客の話を聞き、ニーズを的確に捉える能力を養成する」というカリキュラムへと見直しが図られ、結果、営業マンの業績がアップしたとのことです。

【イノベーションには「FIRE」は必要】
松波氏は、事例紹介後、講演のまとめとして、「イノベーションを起こすためには、『FIRE』が必要である」と話されました。FはFact(事実)、IはInsight(洞察)、Rはreframe(枠組みの再構築)、Eはextensive knowledge(幅広い知識)の頭文字です。行動観察をすることで、事実を知り、それに洞察を加えることで知見が得られ、古い枠組みから新しい枠組みへと、枠組みの再構築が行われるということ。加えて、事実を洞察するには、幅広い知識が必要であるということです。

そして、最後に、行動観察を基にビジネスを変革するには、深い洞察によって真相を次々と明らかにしていくシャーロック・ホームズのような洞察力、そして『マネーボール』のビリー・ビーンのようなリーダーシップが含まれた「知的な勇気」が必要であるとし、「行動観察研究所では、知的な勇気で人の心にエネルギーを届けることを信条に、これからも行動観察の研究を行っていきます」と述べられ、講演を終えられました。

なお、2014年7月10日発売の『ハーバード・ビジネス・レビュー』(ダイヤモンド社)の2014年8月号の特集は「行動観察×ビッグデータ」で、松波氏が「行動観察をイノベーションへつなげる5つのステップ」というタイトルで寄稿されているとのことですので、是非ご一読ください。

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