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平成25年度第4回MOTイブニングセミナー「技術のプロ、経営の素人」を開催(9/25開催報告)

2013/10/07掲載

9月25日、「MOTイブニングセミナー」の第4回が開催されました。シリーズのテーマは、「技術者が経営者に変身するとき」で、今回は、MOT専攻の東実教授が「技術のプロ、経営の素人」という題目で講演を行いました。

東教授は1972年に東芝入社 し、パワー半導体デバイスの研究と事業化に従事。2003年から2008年までは同社のCTO(最高技術責任者)として企業経営に携わった経歴を持っています。

今回の講演では、まず、東芝時代に携わったパワー半導体デバイスの研究開発に関するエピソードを披露。次に、題目である「技術のプロ、経営の素人」として、3つの具体例を挙げて説明しました。最後に、技術のプロとしての成功条件、そして、技術のプロが名経営者と出会うための要因を挙げて、講演を終えました。



【経営に向かなかったショックレーと強い確信の下、技術経営を遂行したムーア】
東教授が、最初に挙げた具体例が、1951年に接合型トランジスタを発明したウィリアム・ショックレー氏と、1968年にインテルを設立したゴードン・ムーア氏との対比でした。

半導体が発見されたのが1874年、そして、世界で初めてp-n接合構造のゲルマニウム半導体ダイオードが発明されたのが1939年ですが、その後の1945年に、真空管増幅器の代替となる半導体を見つけるべく、米ベル研究所の副所長のマービン・ケリー氏が採用したのが、ショックレー氏でした。

彼は1951年に接合型トランジスタの発明し、現在のICの原型を作ったものの、独善的な性格から、管理職を外され、ベル研究所を去ることとなりました。

その後、ショックレー半導体研究所を設立し、ロバート・ノイス氏とゴードン・ムーア氏を採用したものの、この2人もショックレー氏とうまくいかず、8人の仲間と共に同社を退職。そして、1968年にノイス氏とムーア氏が設立したのがインテルでした。

一方、ショックレー氏は、1961年に自ら設立したショックレー半導体研究所の管理職も外され、さらに、同研究所も1968年に清算されました。それに対し、インテルはその後も成長を続け、1995年からは世界半導体ベンダーランキングでトップを維持し続けています。

東教授はこれに対し、「ショックレー氏は技術のプロでしたが、性格に問題がありました。一方、ムーア氏は、1965年に発表した『ムーアの法則』に対する強い確信の下、経営者として、インテルを非常に高い技術ベースの企業に仕立て上げていきました」と説明しました。

【技術のプロが名経営者と出会うための要因は5つ】
次に、2つ目の具体例として、グーグルを挙げました。同社は、1996年にラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏がスタンフォード大学で検索エンジンを開発したのが始まりです。1998年には、株式非公開の会社として設立されました。さらに、2001年には、外部から経営のプロであるエリック・シュミット氏をCEOに迎えました。そして、2011年、ラリー・ペイジ氏はCEOに復帰しました。

それに対し、東教授は「ラリー・ペイジ氏は自分が経営者としての力を蓄えるまでは、経営のプロに任せるとういう戦略を取ったのです。一方、ショックレー氏は、自分には経営者としての資質はないにも関わらず、すべてを自分でやろうとしたことに問題があったわけです」と説明。

さらに、3つ目の具体例として、東教授は「これまでの2つの例は、個人に関するものでしたが、同様のことは、国家レベルでも起こります」と前置きした上で、ヒトゲノム解読プロジェクトについて言及しました。

ヒトゲノム解読は1980年当初、米国よりも日本の方が圧倒的に有利でした。ところが、1987年に米国エネルギー省がヒトゲノムプロジェクトを予算化したのを機に追い上げ、最終的には米国の独り勝ちに終わりました。

日本の敗因として、東教授は、(1)東京大学の和田教授が、1980年に世界に先駆けて「自動DNAシーケンサー」を提唱したにも関わらず、バイオ業界がエレクトロニクスや物理学という異分野が参入してくるのを拒んだこと、(2)埼玉大学の伏見教授が、ヒトゲノム解読の高速化に不可欠な「4色蛍光標識法」の特許を提案していたにも関わらず、当時の科学技術庁が、特定の大学が特許を取得することに理解を示さなかったこと、(3)企業同士の協力姿勢が欠如していたこと、(4)当時DNAシーケンサー開発でトップを走っていた日立からライセンスを受けた米ABI社が次々と製品化を果たし市場を独占したのに対し、日立は製品化をしなかったことの4点を挙げました。

以上3つの具体例を踏まえ、最後に東教授は、技術のプロの成功条件として「既成概念にとらわれないこと」、「名伯楽(マネージャー/リーダー)」、「職場の風土」、「(内部の)競争環境」、そして「運」の5点を挙げました。

また、技術のプロが名経営者と出会うための要因として、まず、「本人が両方の資質を兼ね備えていること」、「技術のプロは虫の眼、経営者は鳥の眼を持っていること」、「目標を共有し、互いに敬意を払っていること」、「人間力」、そして「運」の5点を挙げ、講演を終えました。

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