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鴻海傘下のシャープの復活・躍進に死角はないのか

2017/02/17掲載

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若林秀樹先生(平成29年4月1日着任予定)

ご着任前とはなりますが、若林秀樹先生から寄稿いただいた『鴻海傘下のシャープの復活・躍進に死角はないのか』を掲載いたします。

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 シャープが正式に鴻海傘下となって約半年、その復活が目覚ましい。業績も上方修正、営業利益は黒字、遊休減損を減損しながら最終赤字も縮小あと一歩で黒字というところまでこげつけた。今のところは、マスコミで喧伝されていた人員削減や売却もなく、有機ELディスプレイなど新技術も強化、TVではブランドを買い戻し、米中に液晶パネル工場を建設するようだ。装置メーカーに聞いても、元気が出ているという。
 1年前に破綻しかかった企業とは思えないが、このグローバルで迅速な動きこそ、鴻海傘下となった最大のメリットである。多くのマスコミが報じていたように、カネではなく、こうした経営力、鴻海、ソフトバンク、アリババ、アップルなどグローバル企業との人脈を生かし連携できる。
 
 昨年、シャープ救済に関しては、鴻海かINCJかと、マスコミで大いに話題になり、鴻海にネガティブな見解が多い中で、何度もTVや新聞で鴻海案を支持した。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO97172520Q6A210C1NNS000/
http://mainichi.jp/articles/20160603/ddn/004/070/052000c
http://www.bs-j.co.jp/program/detail/201603/22663_201603092200.html
 最後まで役員会でも議論が分かれたというが、前高橋社長は最後に一番いい仕事をしたといえよう。現在の戴社長も、社員寮から通い毎朝7時に到着、早川徳次氏の銅像に礼をするという。東京で、ランチミーティングをしたが、役員会の会議室、弁当も質素だった。INCJだったら、そうであっただろうか。さんざん報道された7000人リストラどころか、少なくとも未だにリストラはない。一般社員の給料はアップした。
 
 もっとも、本当の勝負はこれからだ。この1年は、パネル需給改善もあった。しかし、ここまで、パネルに投資すれば、損益変動は大きくなり、安定薄利のEMSとは大きく異なってくる。自主製品のR&Dも成果が出るまでには長い年月と赤字がある。それに、どう耐えるかが鍵だろう。また、一部上場復帰を目標とする2018年以降に戴社長は引退し、生え抜きにバトンタッチのようだが、それまでに、どれだけグローバルな人材が育つかだろう。

 最大の死角は、米工場投資でトランプ政権の政策に乗っかった結果としての80年代の日米貿易摩擦・アンチダンピング提訴の再来のリスクだ。もし、シャープや鴻海が、米でTVセット工場もパネル工場も生産、アップルも含めスマホを生産するようになれば、コスト構造等が立ちどころに把握される。それはいいのだが、当然、米ではコストが高いが、米はそれを認めず、中国製の海外からの安い輸入品をダンピングだと主張する可能性がある。米にTV工場もパネル工場も無ければいいが、いったん工場ができると、主張しやすい。米から見れば、補助金政策批判や知財問題も含め幾らでも攻める余地はある。
 もう、記憶にある人も少なくなってきているが、80年代後半、日本からのTV輸出に対し、当時、米にはゼニス社があり、ゼニス社中心に、日本のTVメーカーにアンチダンピングで訴訟を起こした。この結果、日本のTVメーカーは、慌て工場進出を強いられ、米国生産を増やすとともに、当時、出来あがったNAFTAにより、メキシコに工場を設立した。さらに、CRTも槍玉にあがり、当時既に、15%の関税が掛けられていたのに、中には30%の関税が掛けられたメーカーもあったという。

 当時をよく分析した上での選択ならいいが、そうでなければ、鴻海シャープの日本、中国などのTVやパネル工場は、全部、ダンピング提訴の対象となる可能性がある。せっかく、シャープも復活、鴻海も飛躍という時に、高転びに転ぶということは注意してほしい。日本の古い名言、勝って兜の緒を絞めよ、はテリーゴー氏も知っているはずだ。

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