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『日米の上場企業ランキングから思うこと』

2017/02/14掲載

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宮永 雅好先生(平成29年4月1日着任予定)

ご着任前とはなりますが、宮永(雅)先生から寄稿いただいた『日米の上場企業ランキングから思うこと』を掲載いたします。

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トランプ新大統領が誕生した米国では、NY株式市場でダウ平均株価が1月25日に史上初めて2万ドルを超えた。翌日の日本経済新聞は、米国の時価総額ベスト10をダウ平均株価が初めて1万ドルを超えた1999年3月当時と比較して、米国経済の新陳代謝を反映していると評価している。
ところで、日本の株式市場における時価総額上位企業の顔ぶれはどのようになっているのだろうか。日本株が過去最高値であった1989年12月末と今年の1月末の上位ランキングの比較をしてみると、1989年の上位10社のうち6社が今でも10位以内にランキングされており、その業種は銀行、情報通信、輸送機器が各2社となっている(NTTドコモはNTTに含む)。それでは新顔はどんな会社かというと情報通信が2社(ソフトバンクとKDDI)、食品(JT)、それにサービス(日本郵政)である。新顔といってもJTと日本郵政は1989年には未上場でその前身は政府系の公社であり、1989年当時も既に巨大組織であった。またソフトバンクとKDDIはいずれも携帯電話のキャリアであり、社会インフラを担う公的な役割を担う企業と考えられる。つまり、米国では約18年でアップルとマイクロソフトというベンチャー企業からスタートした2社がトップ1、2に躍り出たのに対して、日本では28年経っても革新的な企業が日本経済を支える大きな存在にはなっていない。
そこで思い切って上位50社まで広げて日本の大企業の新陳代謝を調べてみると1989年末に上位50社には入らず2017年1月末に上位50社入りした企業は33社あった。

<データ>
http://most.tus.ac.jp/common/mod_nec/files/1b8f9f301e8d1e.docx
 
 確かに1989年末から2017年1月までに時価総額上位50社のうち33社が新顔になったという事実は新陳代謝が起こったようにも聞こえるが、その新顔企業の中でアップルやマイクロソフトのようにベンチャーや新規事業をスタートさせて成長した会社、また自らのイノベーションによって大きく成長した会社は少ないように思える。敢えて挙げれば、ソフトバンク、ヤフー、キーエンス、村田製作所、日本電産、京セラ、リクルート、ファーストリテイリング、任天堂、などが独自の技術力やITの普及、また経営者の力量やM&Aなどによって大きく成長した企業といえそうだが、その中の多くが既に成長期から安定期を迎えているようにも思われる。
 尤も以上の分析は20世紀の後半から現在までの一時期を対象としたに過ぎない。また、米国企業のように1株あたりの利益を上げることによって株主価値の増大を目指すことだけが企業にとっての目標ではないことも真実であろう。
20世紀を通じて振り返ると、科学技術の進歩は我々の社会を大きく変えてきた。中でも輸送技術の進化は目覚しく、特に自動車の普及は人々の生活の質を大きく高めることになった。2017年1月末の日本のトップ50社の中にはトヨタを始めとした完成車メーカー(4社)、デンソー、ブリヂストンなど自動車関連の企業が多く顔を揃えており、大手の電気・機械メーカーも自動車産業の発展に貢献してきた。またダイキンやコマツもそれぞれがユーザーに高く評価される製品(エアコンと建設機械)を世に送り出し、世界トップクラスの地位に成長している。そうした日本企業はこれまでの実績に誇りと自信を持つべきであろう。
しかしながら、これからの30年、50年といった未来を見据えると、21世紀半ばにはシンギュラリティ(Singularity)も現実的になってくることが想定され、これまでの延長線上で事業を展開するだけでは世界的な競争に置いていかれる可能性が高い。それでもやはり私は、日本企業や日本の技術者が持つ知的資産は、必ずや人類の進歩、地球の生物や環境の持続可能性に貢献していくものと信じており、これからも世界を舞台に科学や技術の進化に日本は挑戦していくべきだと思う。そして勿論、東京理科大学で学ぶ学生やOBがその役割を担っていくことを大いに期待している。

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