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『創業経営者』

2017/02/14掲載

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島田直樹先生(平成29年4月1日非常勤講師着任予定)

ご着任前とはなりますが、島田先生から寄稿いただいた『創業経営者』を掲載いたします。

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 日ごろ私が仕事で付き合っている経営者は、5つのタイプに大別される。
 一つ目は自分で会社を起業し成長させた経営者、2つ目は創業家で2代目、3代目のようにファミリービジネスを引き継いでいる経営者、3つ目は継続企業で内部から登用された経営者、4つ目は親会社から子会社・グループ会社に派遣された経営者、5つ目は特定・特命のミッションをもって外部から送り込まれた経営者である。最近ではこの5つ目のタイプを「プロ経営者」と呼ぶ場合もある。

 5つのタイプを具体的な経営者で紹介てみよう。一つ目の例としては、一代で時価総額1兆円を超えるところまでしたファストリテーリングの柳井社長、ソフトバンクの孫社長、楽天の三木谷社長などがいる。2つの目の代表例としてはユニ・チャームの高原社長、コクヨの黒田社長などがいる。見ようによってはトヨタ自動車の豊田社長もこの例に当てはまる。NTTグループ、総合商社など巨大企業グループを形成している中核企業の経営者は今のことろ、ほぼ3つ目の経営者である。5つ目の「プロ経営者」の例としてはサントリーの新浪社長、資生堂の魚谷社長などが挙げられる。サントリーの新浪社長は、元々は三菱商事からローソンに送られ社長になった4番目の代表的例だった。

 経営者は様々な経験を積み、人間性もとても魅力的な方が多い。その中でも、ゼロからビジネスを創り上げてきた創業経営者の面白さ、人間的な魅力は群を抜いている。事業が安定し、経営が仕組化してくると「経営者」になるが、それまでは「起業家」であり「事業家」であった。一歩間違うと「苦労人」で終わり、他己資本での経営に頓挫すると「失敗人」の烙印を押されたかもしれない。そのように起業家を経て経営者になった創業経営者とはどんな特徴を持っているか、少しスポットライトを当ててみたい。

 創業経営者の特徴はバラエティに富むが、\茲鯑匹猝椶留圓機↓⊆匆颪悗隆垳詰漾↓F伴の社員モチベーションの仕組み、という3つは共通して持つ独特な特徴だと思われる。

\茲鯑匹猝棔А[匹使われる言葉で表現すると、ビジョナリストの人が多い。将来、世の中がどうなるかを想像する、予想するを超え、妄想するに近い形で考えている。その発想に基づき、白地に絵を描くがごとく事業案を構想し、展開案を考えることを厭わない。先を読む発想法としては、類似性・アナロジーで考えている創業経営者が多いように感じる。他業界で起きていることは当業界にも起きる、アメリカは日本の数年先を行っているから日本でも必ず起きる、お客さんのニーズがこういう方向に変化してきているからこういう商品・サービスが求められる、など。また「今後はこうなる」という思い込みが激しいが、それが事業推進への信念に昇華していく経営者が多いように感じる。「弊社の社長の考えに時代が追いついてきている」というような発言をベンチャー企業の中で聞く場合も少なくない。PayPal社という電子決済の仕組みを提供する会社、テスラという電子自動車の会社、スペースXという宇宙の商用開発をする会社を創っているイーロン・マスクという創業者の思考パターンは将来に必要になるものを利用するのではなく、作り出すという一貫した思考に支えれていると考えらえる。思い込みではなく、先を読む目と、創業経営者がそれを信念をもって切り開き事業化することが世の中の発展に寄与してきている。そういう意味で、会社を設立する話と、事業を創造する話は似て非なるものである。

⊆匆颪悗隆垳詰漾Г匹料篭鳩弍勅圓盒賚時期があり、それぞれハードワークによってその苦労を乗り切ってきているが、同様に「周りに助けられた」と口を揃えて言う。事業が軌道に乗るまでに温かく見守ってくれたり、精神的にも応援してくれた人が存在している。創業経営者は私財も出来るようになると、自分が助けてもらったことを他の人にするだけだと、人材を通じた社会への貢献に積極的であるが、謙虚に行っている。寄付やスポンサーシップへの声かけに対し、自分にメリットや会社にシナジーがなかろうと、応援してあげようと思ってくれるのは創業経営者たちが圧倒的に多い。創業経営者が大事にしているのは、人間関係やお付き合いではなく、応援しようと思っている相手が本気であるかどうかにかかっている。創業経営者は組織の中で我慢したわけでもなく、自分が過去、努力した分が返ってきていると信じている。また分野が違っても、本気でぶつかっている人に昔の自分を重ね、懐かしんでいるところもある。創業46年を迎えるミキハウスの木村社長はこれまで累計で少なくとも100人以上のオリンピック参加選手のスポンサーをしている。オリンピックに出るから応援するのではなく、スポンサーした選手から昨年のリオ五輪へは17人が出場した。しかも視聴率がとれるメジャースポーツではなく、マイナー・スポーツに取り組んでいる選手たちである。自ら甲子園球児であったインフォマート社の村上社長(東証一部)は、自然・エコの活動への応援と社会での普及のために私財を投じている。クラシック音楽や伝統文化の継承に資金を投じる創業経営者も少なくない。

F伴の社員モチベーションの仕組み:業を起こす経営者は事業を見る目も独自であるのと同様、経営システム・経営管理システムの構築にも独自性がある。前述のミキハウスの木村社長は賢島保養所を舞台に、販売現場がステージの高い位置から、ステージ下の商品開発・企画ステージに意見を言わせ風通しを良くしている。またバーベキューやいかだづくりなどの自然を利用したチーム横断的な体験を通じ、しょっちゅうチームビルディングを行っている。インフォマート社では、カラオケボックスでの歌の点数を個人に申告してもらい、トーナメントで勝負し、全国の勝ち抜けを業務外で行っている。年に一度の全社総会の2次会が決勝戦で、この参加者には会社から衣装代・化粧代などを提供し、全社員の場で歌声を披露する社員モチベーションの制度がある。また、社員のほとんどが女性のファンデリー(マザーズ)の阿部社長は、結婚時にいくつかの条件をクリアすると会社が112万2000円をお祝い金として出している。日本M&Aセンター(東証一部)では、年度予算を9か月で達成した営業優秀成績者を、海外視察旅行に連れて行く営業管理制度がある。いずれも過去の踏襲や他社のマネではなく、創業経営者が編み出した独創性なもので、創業者の考えを体現するものとして定着しているある。

最後に、創業経営者は厳しいところがある判明、人付き合いなどにも寛大・寛容なこともある。本業ではない事業投資などの甘言に乗ってしまう場合や、銀行などが持ってくる融資、商品・不動産投資などに無条件で応じてしまう場合がある。お金との付き合い方を間違うか、間違わないか。成功してから周りにいる人に踊らされるか、躍らせられないか。正しい金銭感覚を持ちづけられるか、られないか。たまに成功していた創業経営者が晩節を汚すことになる原因はこの辺に共通点がある。

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