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人工知能・IoT・ビッグデータ社会における知財システムと競争政策                MIP教授 平塚三好

2017/03/06掲載

1.人工知能が創作した発明の権利帰属
 昨年2月、“人工知能と知的財産”と題して本コラムに寄稿した。その後のMIP院生らの研究では、人工知能によって自動的に創作活動が行われたとしても、人間が人工知能をツール(道具)として使用した結果の創作物として扱うべきと結論付けた。例えば自動設計ツールを用いて配管や半導体を設計する過程において、発明が生まれるケースと同等と判断したのである。なぜなら、自動的な創作であっても、人間が“自動的”となるようにプログラミングし、人間がそのプログラムを起動させた結果、人工知能が動作するためである。これは、筆者の人工知能の研究開発の経験に基づいている。詳細は、院生の公表に譲り、以降、ビッグデータ社会等について述べる。

2.ビッグデータ社会からSociety 5.0に向けたデータ法制定の動き
 IoTやクラウドサービスから生成されるビッグデータが人工知能や統計処理で分析されることにより、製造業の変革にとどまらず、医療分野やエアライン分野はじめ、様々な業種で新たなサービスが創出されている。これを第四次産業革命と称している。
 そして、我が国では、国民生活に直接かかわる社会インフラまでに波及した結果、ビッグデータ社会が到来したとも言われている。これを受け、昨年、政府は、インターネット・人工知能・ロボット技術などを高度に組み合わせた社会変革の考え方をSociety 5.0と称し、閣議決定した。
 また、データ法の立法化の一環で、いわゆる医療ビッグデータ新法の法案提出の動きも報道されている。それでも米国やドイツに対して周回遅れの感があるものの、猛追状態に入っている。

3.経済産業省の第四次産業革命への取り組みと知財人への期待
 このような情勢を受け、経済産業省は活発に会議を重ね、様々な施策を打ち出しつつある。筆者も、「第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会」の座長代理や、「第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会」の委員を拝命し、人工知能のシステム開発と並行しながら、各会のテーマの研究に取り組んでいる。
 上記の知財システムの検討会では、産業構造の変革に伴って、企業に求められる経営や知財の戦略が複雑となり、知財の制度・運用に期待される役割も多様化すると捉えている。そのため、個別産業分野ごとの将来像や課題を視野に入れ、データ利活用の促進や国際標準化の推進等に向け、知財システムの在り方を早急に検討しなくてはならない。これは、特許庁にとって、本年で最も重要な課題であると長官は誌面で述べており、実際、毎回約2時間の会議に、経済産業省の各部局の部課長級が顔を並べ、長官と技監が最後までずっと参加している。
 一方、競争政策の在り方に関する研究会では、独占禁止法を背景に、あらたな競争の源泉となるデータと競争政策について、公正・自由な競争環境を早急に整備できるよう、報告書をまとめるべく活動している。
 筆者としては、知財政策と競争政策といった両面の会議での議論を踏まえ、日本企業が欧米をリードできるよう、制度設計に貢献していく所存である。
 我々、知財人こそ、この第四次産業革命において活躍が期待されているのである。米国やドイツに後れを取っている我が国が、戦後にモノづくり大国を実現した時と同様、世界トップに躍り出るべく、知財業界を挙げて邁進する時である。我が国は、欧米にキャッチアップして抜きん出る歴史を築いてきたのであり、決して夢物語ではない。筆者なりの具体的なアイデアは別稿で述べたい。この第四次産業革命において我が国がトップランナーとなるよう、志ある知財人のご尽力を切にお願いする次第である。
以上

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