MOT73025
マネジメント領域:マネジメント特論B
岸本 太一
1・2年次 選択2単位 後期(後半) 月曜日 6-7時限

【授業の概要・目的・到達目標】

概要:本の読み方や実務への応用の仕方自体を中心的なテーマに据えた講義は、一見当たり前過ぎるテーマのせいか、あまり見られない。しかし、実は深く考えてみる余地がある。
 目次から本全体のストーリーを推測する。各章・各節で言いたいことを一言でまとめてみる。議論の全体構造を論理図をつくり把握する。わかりにくい表現を別の日本語に翻訳してみる・・・。本を読むことには、ジャンルに関係なく適応できる工夫が様々存在し、その一つ一つを巧く行うためのノウハウもある。
 本読みを実務へ応用するプロセスでも同様である。著者の思考パターンやキー概念を抽出し、それらを基に実務の問題を考えてみる。内容の一部分だけでなく、構造全体をアナロジーする。そのために本の内容と自分の実務の対応関係を徹底的に考える・・・。こちらにも数多くの工夫があり、各工夫の活用ノウハウも存在する。
 本講義では、この当たり前過ぎて見過ごされてきたテーマを、あえて取り扱う。具体的には、本の一部を事前に読んできてもらい、その内容を題材にしたディスカッションを行う中で、本の読み方と実務への応用の仕方を探求していく。
 今回輪読する『産業と商業 第2篇』は、技術経営の包括的な理論書である。経済学の大家によって100年以上も前に書かれた著作だが、本質は普遍的なのか、その内容は今でも色あせていない。一方、『リバース・イノベーション』は、2012年に出版された著作であり、近年国際経営論で注目を浴びている。新興国拠点で生み出されたイノベーションが先進国に逆流していくメカニズムとそれを興すための経営的工夫を語っている。どちらも今回のテーマを議論する上では、絶好の題材である。また、特徴が大きく異なる二冊を連続して読むことは、比較を通じた様々な議論を可能にする。

目的:主の目的は「本の読み方と実務への応用の仕方に関する基礎的なノウハウの習得」にあるが、併せて「考察結果の文章への描き方」についても養っていきたい。後者は、MOTペーパーにはもちろんのこと、実務で文書を書く際にも役立つ可能性がある。また、読み方と表裏一体なので、副次的に議論可能である。

到達目標:上記の目的を達成することが、到達目標である。

【評価】
発表レジュメの内容(40%)、授業での発言の内容(30%)、最終レポート(30%)

<基準>
S評価:到達目標を十分に達成し、極めて優秀な成果を収めている。
A評価:到達目標を十分に達成している。
B評価:到達目標を達成している。
C評価:到達目標を最低限達成している。
D評価:到達目標を達成していない。

以上の割合・基準にて、評価する。

【履修にあたっての注意】
今回輪読する二冊は、経済学者と国際経営学者が書いた専門書であるが、それらの学術的基礎知識がなくても、全く問題ない。むしろ、基礎知識を持たずに専門書を読む場合の方が、本読み技術を磨く上では効果的な機会となるだろう。

【準備学習・復習】(準備学習と復習に必要な時間は1科目あたり合計45時間程度が目安)
事前課題は、二種類に分かれる。(A)本の指定範囲を読み、その内容を基に、自らの実務もしくは現代の企業や産業に関わる問題を考えてくる。(B)要約レジュメを作成する。
(A)については、毎回全員に行ってもらう。考察結果をレジュメの形にし、提出する必要はない。(無論、自主的な提出は歓迎する。)
(B)については、担当者のみの課題である。本の該当範囲を要約したレジュメを作成し、それを講義で発表してもらう。レジュメには、余裕があれば、自己の実務や企業・産業に関わる問題の考察結果を記載してもよい。
レジュメ担当者については、第1回の講義にて、受講生の要望を考慮し、決定する。例年、1人あたりの担当回数は、2〜3回程度である。

【教科書】
アルフレッド・マーシャル著(永澤越郎【訳】)『産業と商業 第二篇 企業組織の支配的な諸傾向』岩波ブックサービスセンター
ビジャイ・ゴビンダラジャン・クリス・トリンブル著(渡部典子【訳】)『リバース・イノベーション 新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき』ダイヤモンド社
『産業と商業 第二篇』は絶版のため、入手方法等については、事前に受講希望者に説明を行う。
また、必要教材については、随時MOTホームページ学生・教員向けサイトの講義資料一覧の部分より配信する。

【参考書】
岸本太一「ハーシュマンに学ぶ研究書としての優れた特徴と研究・思考のスタイル−経営学輪講Hirschman(1970)」『赤門マネジメント・レビュー』8(12),739-760. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR8-12.html.(第1節)

【授業計画】
後期(後半)
項目
講義内容
1 『産業と商業』(1)
第1章「自由市場における需要に対する生産の調整」
2 『産業と商業』(2)
第2章「産業技術が組織的な記録と標準化に負うもの」
3 『産業と商業』(3) 第3章「技術が代表的な企業単位の規模に与えた影響」
4 『産業と商業』(4)
第4章「技術が企業単位の規模に与えた影響について。続論」
5 『産業と商業』(5) 第5章「建設的投機、組織的な農産物市場」
6 『産業と商業』(6)
第6章「一般的な販売の若干の主要問題」
7 『産業と商業』(7)
第7章「一般的な販売の諸問題、続論。大規模小売商」
8 『産業と商業』(8) 第8章「企業組織。株式会社の発達とその影響」
9 『産業と商業』(9) 第9章「企業組織。その金融的基礎」
10 『産業と商業』(10) 第10章「企業組織。課題と必要とされる能力」
11 『産業と商業』(11) 第11章「企業組織。科学的方法の適用」
12 『産業と商業』(12) 第12章「企業組織。科学的方法の適用、続論」
13 『リバース・イノベーション』(1) 第1章「未来は自国から遠く離れた所にある」
第2章「リバース・イノベーションの5つの道」
14 『リバース・イノベーション』(2)
第3章「マインドセットを転換する」
第4章「マネジメント・モデルを変えよ」
15 『リバース・イノベーション』(3) 終章「必要なのは行動すること」
付録A「リバース・イノベーションの実践ツール」
付録B「ネクスト・プラクティスを求めて」
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【備考】